COLUMN

2023.08.03 金融業界

5Gがもたらす金融業界への影響

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5Gは今までの4G(LTE)に比べて高速かつ低遅延で、より信頼性の高い通信規格です。2020年から本格的に導入が開始され、私たちの周りでも普及が進んでいます。5Gの登場により、金融機関は顧客に新しいサービスを提供したり、既存のサービスをアップグレードすることが可能になりました。それに伴い金融業界の競争環境も変化しつつあります。
本記事では、5Gが金融業界に与える影響について詳しく解説していきます。

1.そもそも5Gとは?

5Gとは「国際電気通信連合(ITU)」という専門機関によって定められた通信規定を満たす無線通信システムのことで、「5th Generation(第5世代移動通信システム)」の略です。一世代前の「4G(LTE)」に替わる次世代通信ネットワーク技術として世間に浸透しつつあります。

2.5Gの特徴

1.高速で大容量

周波数帯域幅が広がることにより、高速通信が可能になります。4G(LTE)と比較して、最大20倍の速度で通信が行えるようになり、高解像度の動画でも快適に視聴やダウンロードが行えます。また、VRのように大容量の通信が必要な場合でも、問題なく対応が可能です。

 

2.低遅延通信

4G(LTE)と比べて5Gでは、遅延を1割程度に抑えることが可能です。この技術を活用して、建機やロボットの操作を離れた場所からリアルタイムで行うことができ、遠隔での医療や自動運転などのシーンにおいても活用が予想されています。

 

3.多数同時接続

4G(LTE)と比べて5Gは約10倍の機器に同時接続できます。これからの時代は5Gによりあらゆる機器がインターネットに繋がるでしょう。

 

3.金融業界は5Gによって大きな変化が予想される

5Gの普及により、電子決済の導入が加速しています。コンビニではセルフレジが増え、支払いの無人化が進んでいます。スマートフォン1つあれば買い物ができるため、クレジットカードの提示も不要になりつつあります。

また、金融機関の窓口対応や事務作業などのデジタル化もより加速すると言われています。もし顧客がサポートを必要としても、リモート通話やAIチャットボットなどを利用することで問題なく対応できるでしょう。

また、金融機関の窓口対応や事務作業などのデジタル化もより加速すると言われています。もし顧客がサポートを必要としても、リモート通話やAIチャットボットなどを利用することで問題なく対応できるでしょう。更に、AIが顧客ごとにお金の使い方を分析し、最適なアドバイスをすることも可能となるため、銀行が店舗を持つ意味が薄れつつあります。

5Gの登場により、金融業界は働き方やサービスが大きく変化する可能性があります。企業はこの変化にいち早く対応し、新しいサービスを提供することで、競争力を維持していく必要があります。ここでは、5Gが金融業界に与える影響について、詳しく解説します。

 

1.セキュリティの変化

5Gは高速通信を提供するだけでなく、より高度な暗号化技術もサポートします。金融機関は5Gネットワークを介することで、データを送受信する際のセキュリティを向上させることができます。また、5Gの高速通信環境により、セキュリティシステムは多くのデータをリアルタイムで収集・分析できます。これにより、不審なアクティビティや脅威を迅速に検知し対応することが可能です。

 

2.窓口業務の変化

金融機関は5Gにより社内業務から窓口業務に至るまでデジタル化が加速します。通信の安定感と速度が増すため、ユーザーはアプリを通して自分のスマートフォンから即時決済できるようになります。さらに、遠隔での窓口対応も可能になるため、銀行にわざわざ足を運ぶ必要も無くなるでしょう。

 

3.保険の変化

今後、多くの車が5Gによってインターネットに繋がり、コネクテッドカーへと進化します。例えば、大手自動車メーカーでは、事故発生時に緊急通報するシステムや、警告灯点灯時に適切なアドバイスを行う機能が新車に導入されています。こうした機能が普及することで、自動車保険の内容も変化する可能性があります。例えば、高精度な車内カメラでドライバーの状態を把握できれば、居眠り運転や煽り運転で起こした事故に対しては保険を適用できない条件をつけられるかもしれません。また、速度超過や急加速の頻度といった安全性を示す指標に基づいて保険料率を動的に変更するような契約も可能になるかもしれません。

 

4.金融アドバイスの変化

5Gの登場により、金融機関は顧客の行動データの収集と分析が容易になります。それにより、顧客のニーズを深く理解し、各個人に最適化されたサービスを提供できるようになります。更に、こうしたデータを活用することで、顧客の状況に応じたアドバイスをAIがオンライン上で行うようになるでしょう。例えば、収入状況に応じた適切な投資信託の提案や老後資金準備の勧めなどはAIによって行われると予測されています。

 

5.与信の変化

与信とは、銀行が企業を信用してお金を貸すことを指しますが、5GをはじめIoTやAIを駆使することで、融資の際のリスクを軽減することが可能になります。
例えば、5Gが普及すると高速大容量かつ低遅延でネットワークを使用できるため、実際の現場での業務風景が確認できたり、企業活動を行う様々な場所からリアルタイムで高精度な情報を得ることが可能になります。このデータを分析すれば、与信のリスクを最大限軽減できるでしょう。
また、IoTを活用することで、工場内の生産設備の稼働状況を把握し、売上や取引数のデータと合わせて分析することで、その情報を融資審査に利用することも可能です。
さらにAIを活用することで、融資先企業やその業種について知識が無くてもすぐに情報を収集することができるため、与信判断の手助けになります。AIを活用した情報収集は個人レベルでも普及してきており、例えば、「ChatGPT」を利用して情報収集をする人も増えています。

 

4.5Gの実用化事例

 1.フィンテックにおける活用例

フィンテックとは、金融(ファイナンシャル)と技術(テクノロジー)を組み合わせてできた造語です。金融サービスとIT技術を融合させた様々なサービスが含まれています。5Gの普及で高速かつ大容量の通信が可能になったことに伴い、最近はキャッシュレスサービスが数多く台頭してきました。例えば、口座番号などの情報をスマートフォンに格納することで、キャッシュカードやクレジットカードとして利用したり、スマートフォンで支払い・送金を行うサービスなどがよく使われています。便利なサービスほど、日常に溶け込むスピードが早い傾向があります。

 

2.遠隔操作で運転が不可能に

ある企業からは、車載センサーのデータを用いて自動車ローンの与信審査を緩和する仕組みが発表されています。GPSによって車の位置を特定し、エンジンをリモートで制御する仕組みを使って、返済が滞っている人の車のエンジンを起動不可にすることが可能となります。こうした機能が延滞の抑止になるため、審査の条件が緩和され、従来なら審査を通らなかった人にもローンを提供できるようになります。

5.金融業界において5Gの導入に必要なもの

1.IT技術への順応性が高い人材

目まぐるしい速度で進化を続けるIT技術。特に5Gの導入によって進化の速度は増しています。金融業界に関わらず、今後の社会には、こうした技術の進化に対応できる人材が必要不可欠です。

 

2.キャッシュレスを促す営業担当者

昨今、金融業界では5G普及に伴うキャッシュレスサービスが注目されています。特にEC市場でのキャッシュレス普及は顕著です。しかし、我々の身の回りには支払い方法が現金のみのお店も少なくありません。ここで必要になってくるのが、実店舗にキャッシュレス導入を促す営業担当者です。銀行には、これまで実店舗を構えて強固なシステム基盤を構築してきた信頼があります。こうした信頼関係を活かして実店舗と良好な関係を構築できる営業担当者が重宝されるでしょう。

 

6.まとめ

今回の記事では、5Gがもたらす金融業界への影響について解説してきました。5Gの「高速大容量」「低遅延通信」「多数同時接続」といった特徴を活用することで、キャッシュレスや窓口の無人化などが実現され、急速にビジネスの形が変化していますし、既存サービスの質向上や業務の効率化にもつながっています。
今後も5Gの恩恵を最大限に活用し、革新的なサービスを展開することが金融企業には求められていますが、そのためには技術の変化に対する柔軟な対応が必要不可欠です。