COLUMN

2024.08.01 金融業界

【銀行・金融業界×AI】活用事例と導入メリット

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長期化する低金利などの問題により、銀行をはじめとする金融業界は厳しい逆風にさらされています。今後、業界で生き残っていくには、AI導入によるビジネスモデルの変革が不可欠といえるでしょう。

本記事では金融業界におけるAIの活用状況や導入メリットなどについて解説しています。実際の活用事例もご紹介しますので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

1.銀行・金融業界におけるAIの活用状況

銀行を含む金融業界では、主に以下の4つの領域でAIの活用が始まっています。
・融資審査
・顧客対応
・ドキュメント処理
・自動翻訳

1-1.融資審査

法人が融資の審査を受ける場合、損益計算書・貸借対照表などの決算書や事業計画書などの多くの書類の提出が必要になります。従来、銀行ではそれらの書類を元に人が融資の可否を判断していましたが、現在、この可否判断にAIが導入されています。AIは膨大な情報を人より速く、正確に整理することができるため、よりスピーディーな審査が実現可能になりました。最終的に人が決定を下すことは変わらないものの、AIが集めた銀行の入出金取引などの情報をもとに、融資条件の迅速な提示が可能になっています。

1-2.顧客対応

顧客対応の領域では、問い合わせ対応にAIチャットボットが利用され始めています。営業時間外や休業日に関係なくいつでも問い合せ対応が可能になるため、オペレーターの業務負担の軽減や顧客満足度の向上に貢献しています。

1-3.ドキュメント処理

銀行は申込用紙など、顧客情報が書かれた帳票を大量に取り扱います。従来、こうした帳票情報は人の手によってデータ入力されていましたが、AIによる文字認識(AI-OCR)を組み込んだシステムを使用することで、こうしたデータ入力がかなりの部分で自動化されています。

1-4.自動翻訳

AIによる音声認識機能と自動翻訳機能により、外国人顧客とのスムーズなコミュニケーションが可能になりつつあります。

 

2.銀行でAI化が進んでいる理由

銀行でAI利用が進みつつある背景には、コスト削減の必要性と、低金利による収益構造の変化があります。

2-1.コスト削減

銀行は本店以外にも多くの支店を持っています。支店の運営には様々な経費がかかりますが、その大半を占めるのは、賃料と行員の人件費です。書類保管庫や金庫などが広いほど、また交通アクセスが良いほど賃料は高くなりがちですし、行員が多いとそれだけ人件費も高くなりますが、AIの導入によってこうしたコストの削減が期待されています。例えば、顧客対応の一部をAIチャットボットに任せることで、カスタマーサポート担当者の人件費を削減する等といった施策が実際に進みつつあります。

2-2.従来のビジネスモデルの維持が難しいため

日本では低金利社会が長らく続いており、融資による利益が伸びない状況です。従来は、お金の貸付利息で利益を上げることができていた銀行ですが、現在、このようなビジネスモデルの在り方が成立しなくなりました。貸付利息に頼らない新しいビジネスモデルの模索に向けて、AIの活用が期待されています。

3.銀行がAIを導入するメリット

銀行がAIを導入することには、どういったメリットがあるでしょうか。3つのポイントをご紹介します。

3-1.自動化による業務効率化の実現

AIを導入すると様々な作業を自動化できるため、業務効率化が実現できます。チャットボットを使った問い合わせ対応以外にも、音声認識を活用したコールセンターの業務支援などが可能です。今後は人の手でしか行えない業務に人員が集中していくでしょう。

3-2.サイバーセキュリティの強化

サイバーセキュリティは、膨大な個人情報を取り扱う銀行にとって信用に関わる問題です。サイバー攻撃の手口は年々大規模化・巧妙化しており、頭を悩ませている金融機関は少なくありません。そこで活用したいのがAIです。

これまで人間がチェックしていた不正監視などをAIによって自動化すれば、ヒューマンエラーによる検知ミスを大幅に減らせるでしょう。AIには自ら学習するという特性が備わっているため、検知精度は日を追うごとに向上していきます。近年、人の手では対処しきれないサイバー攻撃も増えていますが、AIを導入すれば、対策を講じやすくなります。

3-3.信用評価の補助や精度の向上

信用が関わる銀行業務は、預金取引、事業承継、M&A(合併・買収)のアドバイスなど多岐にわたりますが、最たるものは融資業務です。前述のとおり、融資審査には膨大な書類が必要で、手続きも複雑でしたが、AIの導入によって正確かつスピーディーな審査が可能になりました。

 

4.銀行・金融業界のAI活用事例

銀行・金融業界で実際にAIが活用されている事例をご紹介します。

4-1.ローン専用チャットボットの新設

AI対話型エンジンを導入したある銀行では、毎月1万件を超える問い合わせが寄せられたそうです。特にローンに関する内容が多かったため、住宅や自動車、教育といった各種ローンに関連する質疑応答を充実させたローン専用チャットボットが新規導入されました。

結果、利便性が向上しただけでなく、顧客のニーズに合わせたマーケティングデータの収集・分析が実現しています。今後はローン審査の自動化も含めたさらなる改善が期待できるでしょう。

4-2.社内向け問い合わせ業務の負担削減

各地の店舗や窓口から大量にかかってくる問い合わせの負担軽減のため、FAQ形式で利用できるチャットボットが登場しています。店舗や窓口の担当社員は、パートナーセンターに問い合わせなくてもチャットボットで直接検索できるようになり、オペレーターの負担軽減が実現します。また工数が減った分、社員の業務スキル向上に時間を割くことも可能となります。

4-3.資金需要予測による効果的な融資提案

融資提案の質を向上させる取り組みとして、口座の入出金データをもとにAIで資金需要を予測する検証も始まりました。AIを活用することで人間では気付けないような、データの裏に隠されたパターンなどを見つけることができます。取引先企業の資金状況をいち早く予測・把握し、ニーズに合わせた融資提案が可能となります。また、行員がこれまで手作業で行っていた与信管理業務の効率化も期待されています。

4-4.不正送金の検知

AIによって不正送金を検知するサービスも登場しています。不正送金の疑いがある事例をAIが学習するため、人の目では見落としてしまうような不正も検知が可能となります。

4-5.自然言語処理によるセキュリティ対策支援

先述の通り、サイバー攻撃は年々大規模化・巧妙化しており、人の手では防ぎきれなくなりつつあります。そこで、AIによる自然言語処理を用いたセキュリティ強化が始まりました。世界中で共有されている、サイバー攻撃に関する手口や傾向等の膨大な脅威情報をAIが収集・分析し、セキュリティ対策として有益な情報を抽出することで、セキュリティ対策の支援に役立てられています。

4-6.文字認識機能による書類、帳票の電子化

AIの文字認識機能(AI-OCR)を使用することで、人の手で情報をコンピューターに打ち込み、電子化する手間がなくなりました。更に、電子帳簿保存法(電帳法)も改正されたことで、現在、様々な書類や帳票類の電子化が急速に進んでいます。電子化された書類は順次破棄されるため、将来的には保管庫も必要なくなるでしょう。

4-7.オンライン完結型の融資審査の実現

中小零細企業にとって、資金繰りは会社の存続がかかった重要な仕事です。しかし、融資の申込は手続きが煩雑で時間もかかるため、スムーズに資金調達ができないケースも散見されました。

こうした状況を受け、オンライン上で申込から契約までワンストップで完結できるAIサービスが登場しています。口座の入出金記録などをもとに、融資可否をAIが自動で判断する仕組みです。従来は様々な書類の提出が必要だった審査がスピーディーに行えるようになったことで、資金繰りのハードルが下がっています。

4-8.広告制作物などの校正・校閲の効率化

AIによる文字の校正・校閲も始まっています。金融機関は専門用語が多く、パンフレットなどの広告制作物を1枚作成するだけでも二重三重でのチェックが欠かせません。AIを導入することで、こうした確認作業にかかる時間や負担を大幅に削減できます。

 

5.まとめ

銀行はこれまで利息による利益が収益に大きく貢献していましたが、低金利社会が続く日本では、もはや従来のビジネスモデルでは存続が難しいのが現実です。厳しい社会を生き残っていくためにも、AIを活用した新たなビジネスの模索が進められてきました。

銀行でのAI活用は既に始まっており、コスト削減や業務効率化、顧客満足度の向上、セキュリティの強化が実現しています。今後もAIの活用は様々な金融業務で進むでしょう。本記事でご紹介した事例を参考に、ぜひAIの導入を検討してみてください。