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AI人材とは?不足している理由や人材の育て方
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近年AI技術が目覚ましい進歩を遂げています。しかし、AIをビジネスに活用して利益を上げる企業が増える一方、AIを使いこなせる人材は不足しているのが現状です。こうしたAI人材を確保することは多くの企業にとって近々の課題といえるでしょう。
本記事では、AI人材に求められる知識やスキルについて説明し、さらにAI人材が不足している理由を解説しています。人材育成のポイントもご紹介しますので、参考にしてください。
目次
1.AI人材とは
AI人材とは、機械学習やディープラーニング、自然処理言語などAIに関する知識やスキルを身につけ、ビジネスに活用できる人材のことです。AI以外にも求められる知識やスキルは幅広く、活躍が期待できる職種も多岐にわたります。
1-1.求められる知識やスキル
【機械学習に関する知識】
機械学習やディープラーニング(深層学習)は、現在のAIの基本となる知識です。機械学習はコンピューターに膨大なデータを学習させる技術のことで、コンピューターは与えられたデータの中から特定の分野や事柄に関する特徴を自ら学習していきます。ディープラーニングとは機械学習の一種で、特に複雑な問題を解決するために設計された学習方法です。人間の脳の構造と機能を模倣したニューラルネットワークと呼ばれるアルゴリズムを使用します。ディープラーニングでの学習が進んだAIモデルは自動運転から言語翻訳、画像やテキストの生成など、ありとあらゆる分野で使用されます。
【データサイエンスの知識】
AI人材には、データサイエンスの知識も欠かせません。データサイエンスとは、膨大なデータについて統計学や数学の理論をもとに分析する学問です。例えばデータサイエンスの知識を使って顧客データを分析すれば、これまで見つけ出せなかったような、顧客の行動パターンや潜在的なニーズを見つけ出すことができます。大量のデータを学習するAIをより効果的に活用するためには必須の知識です。
【データ利活用に関する法的知識】
AIを有効に使うには、大量のデータが欠かせませんが、取り扱いには注意が必要です。他人が所有しているデータを勝手に使用すると知的財産権に抵触するため、データを正しく利活用するには法的知識が必要になります。
例えば2024年3月に欧州議会で採択された世界初のAI規制法案には、EU加盟国内でのAI利活用に関する統一ルールが定められており、加盟国はもちろん、EU域内で事業を展開している外国企業にも適用されます。当然日本企業も無関係ではありません。AIを使ってビジネスに行う際には、こうした法案を正しく理解する必要があります。
【プログラミングスキル】
プログラミングスキルは、AIの開発や検証を行うのに欠かせません。機械学習モデルを適切に動作させるにはプログラミング言語を使って手順を入力する入力する必要があります。AI業界ではPython(パイソン)と呼ばれるプログラミング言語が主流ですので、少なくともPythonは扱えなければなりません。
1-2.活躍が期待できる職種
【AIエンジニア】
AIエンジニアはAIの開発、もしくはAI技術を組み合わせたシステムの開発を担当します。AIエンジニアになるには、AIに関する専門知識が備わっていることが大前提です。そのほかにも、ニーズに合わせた開発のために、顧客の行動や市場動向を読み取る力も求められます。
【AI研究者】
AI研究者は、AIとそれを取り巻く技術に関する専門家です。AIの開発には、膨大なデータの処理過程やアウトプットの仕組みを定めたAIモデル(機械学習モデル)の存在が欠かせません。このAIモデルの精度をより高めたり、新たなアルゴリズムを生み出したりするのに、学術的な側面から関わるのがAI研究者です。
【AIプランナー】
AIプランナーは、自社のビジネス戦略に合わせたAI製品やサービスの企画・実装を手がける専門家です。それほかにも、AI戦略の立案やプロジェクト管理、ソリューションの実装や評価、リスク管理など、様々な役割を担います。
【機械学習エンジニア】
機械学習エンジニアは、機械学習に関するアルゴリズムの設計から開発、実装までを担当する専門家です。AIエンジニアと混同されがちですが、AIエンジニアはAI開発全般を担うのに対し、機械学習エンジニアは、文字通り機械学習に範囲が絞られています。AIに実行させたい処理をコンピューターに学習させて最適なアルゴリズムを検証することなどが、主な役割です。
【自然言語処理(NLP)エンジニア】
自然言語処理(NLP)エンジニアは、コンピューターに人間の言語を理解、解釈、生成する能力を持たせたシステムの開発を担う専門家です。具体的には、テキスト要約や機械による翻訳、音声アシスタントなどが挙げられるでしょう。近年ではChatGPTが登場するなど、コンピューターと人間とのコミュニケーションがより向上してきています。
【データサイエンティスト】
データサイエンティストは、データ分析を通して組織に有益な情報を見つけ出し、課題解決に役立てる専門家です。データを正しく分析するには元となるデータを収集し、分析しやすいように加工することも必要ですが、その役割もデータサイエンティストが担います。
【デジタルストラテジスト】
デジタルストラテジストは企業のデジタル戦略全般に携わる専門家で、最高デジタル責任者はCDO(Chief Digital Officer)と呼ばれます。AIを活用できるスキルはもちろんのこと、マーケティング施策やコンテンツ戦略の立案、データ分析やパフォーマンス測定など、様々な能力が求められる職種です。
【倫理専門家】
倫理専門家は、AIを活用する中で生じる倫理的な問題に対処する専門家です。たとえば、Googleの画像認識AIでは、人間を「ゴリラ」と判定してしまった過去がありました。また別の例では、AIチャットボットが自殺や他殺を促した例も報告されています。このように、AIの利用は大きな倫理的リスクを孕んでいます。AIの社会に対する影響が増してきている中、人々が健全にAIを利用できるような倫理規範を策定したり、バイアスを排除したりするのが、倫理専門家の役割です。
2.AI人材が不足している理由
自社の利益向上や顧客の利便性アップなど、様々な面で活用が進んでいるAIですが、AIを開発したり、あるいはAIを組み込んだ製品を作ったりできる人材は不足しているのが現実です。なぜAI人材は足りていないのでしょうか。
2-1.高度な専門知識が必要
AIは登場してからというもの、急速な勢いで進化し続けています。AIの仕組みを理解して使いこなすには機械学習やディープラーニング、統計学や数学、プログラミングなどの専門知識が必要ですが、これら知識を身に付けるのは容易ではありません。基礎を学ぶだけでも相当な時間がかかりますし、実践的な知識を身に付けるとなると更なる時間と労力がかかることも、即戦力として活躍できるAI人材の少なさにつながっていると考えられます。
2-2.人材獲得競争の激化
AIの専門知識や技術が備わっていて、すぐに企業内で活躍できる人材は、どの企業でも重宝されます。優秀な人材獲得に向けた競争の激化が、AI人材の不足に拍車をかけています。大手企業や研究機関であれば、高額な給与や待遇などで差をつけて優秀な人材を集めることも可能ですが、資本力や知名度に乏しい中小零細企業では、なかなかそうもいきません。
3.AI人材の社内育成が難しいとされる要因
人材獲得が難しい中、採用のコストを考えると社内でAI人材を育成できればベストですが、現実には難しいといわれています。その要因について、詳しく見ていきましょう。
3-1.教育体制が整っていない
1つ目は教育体制が不十分なためです。AIそのものが急激に発展・普及してきたため、教育機関や企業などでAIを学ぶ体制がまだ整っていません。そもそもAI人材が何人必要なのか、どんな教育が必要なのかが不透明なケースもあります。仮に社内でAIに関する研修やセミナーを実施したとしても、不定期開催だと知識が定着しにくく、似たような内容に偏りがちです。
また先ほども述べたように、AI人材には高度な専門性が求められるため、初学者や未経験者が挑戦するにはハードルが高いのが現実です。
3-2.AI人材に適した実務がない
2つ目は、AI人材に適した実務がない場合があることです。AIを手軽に導入できそうな製品やサービスが自社にない場合、AI人材のスキルは宝の持ち腐れになってしまうでしょう。
そのほか、社内でAIへの理解が不足しているのも、人材が育たない要因と考えられます。なぜAIが必要なのか、AIを導入すると自社のビジネスにどう役立つのかという目的をしっかり共有し、人材育成への意識を高めてもらうことが大切です。
4.AI人材の育て方のポイント
社内でのAI人材の育て方について、3つのポイントをご紹介します。
4-1.自己学習や外部研修などの実施
初学者や未経験者に対して、まず基本的な知識を身につけてもらいたいなら、自己学習がおすすめです。AIの理論などをまとめた参考書のほか、WEB教材も活用できます。学びへのモチベーションを維持できるよう、普段の業務と並行しながら無理なくステップアップできる体制を整えましょう。また、会社からの一方的な強制ではなく社員が主体的に学習できるような環境の構築も大切です。
ある程度知識が身に付いてきたら、外部講師による研修を検討します。AIを活用した課題解決のロールプレイングやディスカッションなどを通して、AI人材に必要な実践的知識に身に付けられます。コストはかかりますが、着実なAI人材育成を目指せるでしょう。
4-2.役割に合わせたカリキュラム作成
ひとくちにAI人材といっても、活躍が期待できる職種は多岐にわたります。どんな業務を行うかで求められる知識やスキルが異なりますので、役割に合わせた教育カリキュラムを作成することが大切です。たとえば、データサイエンティストはデータの解析を行いますが、そのためにはデータの収集方法や加工方法を覚えないといけません。そこで、データの前処理に関するカリキュラムを組み込む必要があります。
また、カリキュラムは一度作成したら終わりではありません。日進月歩であるAIの進化スピードに追いつくためには、定期的にカリキュラムの内容をアップデートしていくことが重要です。
4-3.政府の取り組みを社内で導入
日本では現在、国を挙げてAI人材の育成に乗り出しています。こうした政府の人材育成取り組みを社内で導入するのも手です。例えば、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」は、AIやデータサイエンス、IoTなどの知識・技術を社会人が身に付けることを目的として経産省が認定した講座制度です。この制度は講座修了時に修了証が発行されるため、AI人材としての信頼性も高まるでしょう。
5.まとめ
AIは今後もますますビジネスに活用されていくでしょう。機械学習やディープラーニング、プログラミング、データサイエンスなどの幅広い専門知識を身に付けたAI人材は、様々な職種での活躍が期待できます。とはいえ、優秀なAI人材は少なく、人材獲得競争も激化しているのが現実です。自社内での人材育成が難しいとも言われているため、政府主導の取り組みなども積極的に検討しながら、効率的な人材育成を目指しましょう。