COLUMN

2023.06.14 金融業界

2025年の壁とは?DXが遅れている金融業界が抱える課題

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2025年の壁とは?DXが遅れている金融業界が抱える課題

金融業界だけでなく、自動車産業や製造業などのあらゆる業界において、ビジネスのプロセスやサービスをデジタル技術によって変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が加速しています。

DXは金融業界で特に注目を浴びており、金融業界におけるデジタル化が進むことで、より効率的な業務運用や顧客体験の向上が期待できます。さらに新しいビジネスモデルの開発や顧客ニーズに応じたサービス提供を可能にすることで、競争力を強化することもできます。

ただ金融業界には、DX推進の障壁となる「2025年の壁」が存在しています。

本記事では、2025年の壁を乗り越えるために企業が取り組むべき施策について紹介します。

1.2025年の壁とは?

「2025年の壁」とは、2025年に金融業界が直面するとされる技術的課題のことです。日本政府が2016年に策定した「第5次情報通信基本計画」では、日本の金融DXにおいては、2025年が重要な節目とされています。 

この壁の存在は、金融業界がデジタル技術を十分に活用できていないことに起因しています。これまでの金融業界におけるITシステムの導入は、業務の合理化やコスト削減が主な目的であり、デジタル技術を活用して新しい価値を提供することが目的とされていませんでした。このまま経営改革が行われず、ビジネスモデルの刷新が行われなかった場合、2025年以降に最大12兆円の経済損失が生じるといわれており、迅速な対策が求められています。

この問題を乗り切るため、DXによる新しいビジネスモデルが金融業界には必要です。
顧客のニーズに合わせたサービスやより高度なセキュリティ対策、データ解析やAIによる顧客体験の改善など、新しい価値を創造することが求められます。また、そのための人材確保や育成にも力を入れる必要があります。

 

2.金融業界が抱える課題

1. データの活用

金融業界は顧客情報や取引履歴などの大量のデータを取り扱っています。しかし、これらのデータは十分に活用されていません。
データサイエンスやAIなどの技術を活用して、顧客の行動パターンや嗜好を分析し、金融商品の提供や顧客サービスの改善などに活用する必要があります。

 

2. セキュリティの強化

金融業界は、顧客の個人情報などの機密情報を取り扱っていますが、近年、サイバー攻撃や内部不正のリスクが高まっており、より高度なセキュリティ対策が求められています。AIや機械学習などの技術を活用して、異常検知や自己学習型のセキュリティ対策を実現することが必要です。

 

3. フィンテック企業との競争

フィンテック企業が、新しい金融サービスの提供や顧客体験の改善を進めており、金融市場における競争が激化しています。こうした企業に負けないよう、より革新的なサービスやビジネスモデルを開発する必要があります。

 

4. 人材の確保と育成

金融業界には、データサイエンティストやAIエンジニアなど、高度な技術を持つ人材が必要です。こうした人材の需要は増加する一方、供給が追い付かず、人材不足が深刻な問題となっています。金融業界は優秀な人材の確保や育成の取り組みを進める必要があります。

 

5. デジタル化への対応

金融業界のデジタル化は進んでいるものの、全ての企業が同じスピードで変化しているわけではありません。
デジタル化をこれまで以上に推し進めることで、より効率的な業務運営が可能になり、顧客体験の向上につながります。そのため金融業界はITシステムの強化やオンラインサービスの充実、モバイルアプリの開発などを、より迅速に進める必要があります。

 

6.顧客の期待に応える

金融業界において、顧客の期待は年々高まっています。
高度なデジタル技術でカスタマイズされたサービスや強固なセキュリティが求められており、金融業界はこうした期待に応えるために、常に最新の技術やトレンドを把握し、顧客に価値を提供することが求められます。

 

3.2025年の壁を乗り越えるための施策

1. クラウド導入

金融機関のDXにおいて、クラウド導入は欠かせません。
クラウドは顧客ニーズに応えつつ、業務の効率化やコスト削減も見込める施策で、インフラの共有によりシステムの導入コストや運用コストを削減することができます。また、クラウド上では自由度の高いシステム構築が可能で、必要に応じて機能の拡張や縮小ができるため、顧客ニーズに応じた柔軟なシステム運用ができます。
ビジネスの立ち上げから運用まで一貫した支援がクラウドによって可能になります。

 

2. ペーパーレス化

ペーパーレス化によって印刷や郵送のコストを抑えることができます。また、データを電子化することで管理が容易になり、データ分析の時間も短縮されるため業務効率化につながります。ただし、重要書類を扱う場合が多いため、ぺーパーレス化には強固なセキュリティ対策が必要になります。

 

3. AI技術の導入

AIを導入することで、高度な自動化が可能になります。
例えばAIはトレンドや顧客の行動を分析して、適切な商品を提案することができますが、こういった施策はサービスの質向上に欠かせないものです。
また、AIを使うことで人的なミスを極限まで減らすことができ、リスクの低減にもつながります。

 

4. RPAの活用

金融機関では書類の作成や確認などのルーティーン業務が多く発生しています。RPAを活用することでこれらの業務を自動化できるだけでなく、人的ミスの軽減にもつながります。
AI導入にかかるコストや期間に比べ、RPAの導入難易度は低いですが、RPAは人工知能ではないため、繰り返し行う業務であっても、AIのように自律的に学習することはできません。そのため、人間があらかじめプログラムした単純作業しか行えないというデメリットもありますが、利用方法を工夫すれば確実な業務効率化につながります。

 

5. 生体認証

生体認証は不正アクセスやなりすましの防止に役立ちます。指紋認証や顔認証、声紋認証は従来のIDやパスワードに比べて高い認証精度を誇っており、IDやパスワードの管理にかかっていたコストも削減できます。
また、顧客がIDやパスワードを覚える必要がなくなるため、サービスの利便性も向上します。

 

6. オープンAPI

オープンAPIを導入することで自社サービスと外部サービスの連携ができ、その結果新しいサービスを提供することができます。また、外部サービス利用者に対しても自社のセキュリティーポリシーを適用することが可能なため、情報漏洩などのリスクを軽減することができます。

4.金融DX新規ビジネス

1. デジタル借入サービス

デジタル借入サービスは、オンラインプラットフォームを通じて、簡素な手続きで借入ができるサービスです。申請はオンライン上で行い、AIによる審査が速やかに行われます。また、契約書類の作成や署名もオンライン上で完結し、融資も迅速です。金融業界に新たなビジネスチャンスをもたらしています。

 

2. AI投資アプリ

AIと予測分析を組み合わせた投資アプリで、過去の市場データやトレンドを分析し、将来の市場動向を予測した個別の投資データを作成します。自動リバランス機能やアラート通知などの機能によって、リスク管理や収益性の向上にも寄与し、より手軽で効果的な投資体験を提供しています。

 

3. オープンバンキング 

オープンバンキングとは、APIを使用して当事者間で金融データを共有するものです。このプラットフォームを通じて金融機関はAPIを提供し、第三者はそれを活用して新たな金融サービスやアプリケーションを開発・提供することができます。

 

4. デジタル保険プラットフォーム

デジタル保険プラットフォームは、保険商品をオンライン上で比較検討し、購入できるサービスです。また、AIのデータ分析に基づいた、最適な保険プランの提案が可能になります。オンライン上での手続きや24時間対応のカスタマーサポートが利用できるなど、利便性の高いサービスです。

 

5. サイバーセキュリティサービス

デジタル化が進む金融業界では、サイバーセキュリティの重要性が高まっています。AIを活用した高度な脅威検知システムやセキュリティ監視ツールを導入し、顧客のデータと資産を保護するサービスが登場しています。

 

5.まとめ

金融DXには、2025年までに多くの課題が待ち受けています。その中でも人材不足やシステム更新の問題は特に深刻です。しかし、こうした課題を克服できれば金融業界は大きな進歩を遂げることができます。
課題の克服にはクラウドやAI技術、RPA、生体認証、オープンAPIなどの新しいテクノロジーを導入することが重要です。これらのテクノロジーを活用することで業務効率化や新規ビジネスの創出を行うことができます。
金融DXにはリスクも伴いますが、法的規制やセキュリティ強化などの対策をしっかり行いつつ、プロジェクトを推進していきましょう。