COLUMN

2023.07.04 金融業界

金融DXを実現するデジタル技術4選

#AI活用 #デジタル技術 #金融業界

経済産業省 が 2018年12月に発表した「DX推進ガイドライン」では、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
ここで注意しなければならないのは、単に業務にITを取り入れればDXが成功するわけではないということです。ITの導入はDXを推進するための手段に過ぎず、最終的な目標は製品やサービス、ビジネスモデルを変革することにあります。

 

金融DXとは、金融業界においてデジタル技術やAIを活用して業務の効率化・自動化を行い、新規ビジネスの創出などを通して、ビジネスモデル自体の変革を成し遂げ、競争上の優位性を確立することです。また、金融業界はデジタルチャネルを通じて24時間365日、いつでも利用できるサービスを提供しようとしています。

 

1.DXを実現するデジタル技術4選

AI
AIとは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略で、認識・学習・推論・問題解決など、人間と同等の知的能力を持つコンピュータのことを指します。AIは、データの解析やパターンの認識、自然言語の理解や生成、意思決定などの高度な処理を自律的に行うことができます。AIの応用範囲は広く、データの量や品質の向上、コンピュータの性能向上、アルゴリズムの進化などにより急速に発展しており、今後もさらなる進化が期待されています。

AIは金融業界においても多岐にわたる領域で活用されています。以下では金融業界において、AIを活用することで可能となる業務について紹介します。

 

・顧客にあったサービスや商品の提供
AIが過去の行動履歴やプロファイル情報を分析することで、顧客のニーズに沿った金融サービスや金融商品を提供することができます。

 

・効率的な顧客応対
ディープラーニングにより音声認識精度が飛躍的に伸び、金融機関コールセンターの応対でも活用されることが増えてきました。例えば顧客の問い合わせ内容の音声をテキスト化することで、効率的な顧客サポートやクレーム対応を可能にしています。またAIチャットボットを使えば、24時間リアルタイムでのサポートが可能になり、顧客の問題や要望に素早く応えることを実現しています。AIと顧客サービスの組み合わせは、現代の金融業界において重要な競争要素となっています。

 

・リスク管理
リスク管理は金融業界で特に重要とされていますが、AIは大量のデータを高速かつ正確に解析し、異常を検知することができます。データパターンの分析によって、正常な行動とは異なる行動のパターンを特定し、詐欺や情報漏洩をはじめとするあらゆるリスクを最小限に抑えています。そのほかにも、契約書やその他書類の整理、データの収集といった業務をAIに任せることで、人的ミスのリスクを軽減することもできます。

 

・Generative AI(生成系AI)
Generative AI(生成系AI)は、新しいデータや情報を自動的に生成することができるAIのことで、音楽や画像、文章、動画など様々な種類のコンテンツ生成に利用されています。2022年11月にOpenAI社がリリースしたテキスト生成AIサービスである「ChatGPT」は、記録的な勢いでユーザー数を増やしています。ChatGPTは検索エンジンのように収集した情報を単に提供するのではなく、まるで人間のように会話することが可能です。質問に対しての回答やアドバイスをしてくれるだけでなく、小説や脚本のようなものまで生成することができます。また、文章だけでなく、簡単なコードも作成してくれるなど、様々な用途で活用されています。

 

金融業界でも、分析レポートの生成や、コピーライティング、SNS投稿といったマーケティングコンテンツの作成にChatGPTが活用されています。

 

 

②クラウド
総務省が発行した「平成30年版 情報通信白書」によると、クラウドとは「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」を略した呼び方で、「データやアプリケーションなどのコンピュータ資源をネットワーク経由で利用する仕組み」と定義されています。クラウドは柔軟性と効率性の高いインフラストラクチャで、デジタル化とイノベーションを推進において重要な役割を果たします。DX推進を妨げているレガシーシステム(過去の技術や仕組みにより構築されているシステム)から脱却するため、クラウドへの移行は各方面で進んでいます。
クラウドを活用すれば必要に応じてリソースを柔軟に調整できるため、ビジネスの急激な成長や需要の変動に迅速に対応でき、業務の拡大や新しいプロジェクトへの対応をスムーズに行うこともできます。また、クラウド上では、「SaaS(Software as a Service)」と呼ばれる電子メール、グループウェア、顧客管理、財務会計などのソフトウェアや、「PaaS(Platform as a Service)」と呼ばれる仮想化されたサーバやデータベースなどのアプリケーション実行用プラットフォーム、「IaaS(Infrastructure as a Service)」と呼ばれるデスクトップの仮想化や共有ディスクなどのインフラの提供が可能になり、イノベーションに貢献しています。このようなビジネスプロセスの効率化などを通じてクラウドは企業のDX推進に大きく影響を与えています。
金融業界においても、クラウドはデータストレージやデータ解析、バックオフィスの業務効率化、顧客対応の改善等に活用されています。金融業界では、セキュリティと規制への適合性が重要な要素となるため、信頼性の高いクラウドプロバイダーとパートナーシップを築くことが必要です。

 

③5G
5Gとは「第5世代移動通信システム」のことで、次世代の無線通信技術です。5Gは、従来の4Gより大容量かつ低遅延の通信インフラを提供し、イノベーションの可能性を広げています。4Gに比べて通信速度が約20倍と言われており、大量のデータを高速で送受信することが可能なため、業務の効率化やリアルタイムでの対応が可能になります。
金融業界において5Gによる高速通信は、スマートフォンやモバイルデバイスを使用して金融取引を行う際のパフォーマンスを向上させています。また金融業界では、顧客データの保護やセキュリティ脅威への対策が重要ですが、5Gの活用により、エンドツーエンドの暗号化やセキュリティプロトコルの強化が可能となります。

 

ブロックチェーン
ブロックチェーンは、データを分散して記録・管理するデジタル台帳技術です。情報は「ブロック」と呼ばれるデータの集まりに記録され、それらのブロックは連鎖的につながっています。各ブロックはネットワーク上の多数のコンピュータで検証され、一度記録されたデータは改ざんがほぼ不可能となります。この特徴により信頼性の高いデータ管理が実現し、中央集権的な機関を介さずに取引や契約を行うことができます。

 

ブロックチェーンは以下のような仕組みを支えています。

 

・仮想通貨
「ビットコイン」や「イーサリアム」など、電子データでやり取りされる通貨の総称で、暗号資産は銀行等の第三者を介することなく財産価値をやり取りできる仕組みとして高い注目を集めました。

 

・DeFi
「Decentralized Finance」の略で、日本語では「分散型金融」と訳されます。従来の金融システムにおいては資金をやり取りする際、銀行や証券会社などに資金を預けるなど、中央集権的な管理者を経由する必要がありますが、DeFiでは上述の仮想通貨を通して、そうした管理者を介さず、当事者間で直接取引や管理を行うことができるため、時間と手数料が削減できます。

 

・NFT
「Non-Fungible Token(代替不可能なトークン)」の略で、固有のトークンが付属することで、コピーが不可能になっているデジタルデータのことです。デジタルで作られた絵に数億円の価値がつくなどバブル的な盛り上がりを見せたこともあります。

 

 ブロックチェーン技術とその応用が、未来の銀行にとって重要な要素となる可能性があります。また、ステーブルコイン、そしておそらくデジタルユーロの登場も、この流れを前進させることになると言われています。こうした技術は、金融サービスの様相を大きく変え、まったく新しい収益機会が生まれる可能性を秘めています。
高まる顧客の関心や需要に対応できるよう、金融企業は今のうちに暗号通貨やデジタル資産がもたらす機会を検討しておく必要があるでしょう。

 

2.新たなデジタル技術を導入するときに気を付けるべきこと

新たなデジタル技術を導入する際には、以下のポイントに注意することが重要です。

 

・セキュリティ対策
サイバーセキュリティとは、デジタル化された情報の漏洩や改ざんを防ぐ方法・手段のことを指します。クラウドの導入はすぐに始められる上、運用負荷が軽く、柔軟なカスタマイズも可能な一方、レガシーシステムに比べデータの外部漏洩やアカウントの不正利用などのリスクが高まるため、シングルサインオンやEDR(Endpoint Detection and Response)などを行ってセキュリティ対策を万全にする必要があります。

 

・社員への浸透と育成
全社員に対してIT導入に対する理解を持ってもらい、その後も学習する機会を設けてITリテラシー教育を行うことが必要です。また、リテラシーを強化するため、クラウドなどにアクセスしやすい設備や環境を整える必要があります。

 

・目的の確認
新技術はあくまで手段であり、それを使いこなすことによって新たなサービスの創出やビジネスの変革を行い、DXを推進することが目的であることを忘れないようにしましょう。

 

3.まとめ

DXにはデジタル技術の活用が必要不可欠です。そのため、世の中にどういった技術があり、どのような先行事例があるかを把握しておくことは非常に重要になります。また、デジタル技術の活用にはリテラシーの向上が欠かせません。新技術に関する情報はすぐにキャッチアップしましょう。