COLUMN

2024.03.21 DX人材育成

DX時代をリードする人材育成の重要性と課題

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デジタル技術を駆使してビジネスの在り方や企業風土を変革するDXは、激しい競争社会を生き残るために、もはや避けて通れない課題といえるでしょう。DXをスムーズに進めるために重要なのは、ITスキルと自社ビジネスの両方に精通した人材の育成です。しかし、その重要性を理解はしていても、思ったように育成が進められない企業も多いのではないでしょうか。本記事では、DX時代をリードする人材育成の重要性と課題について解説します。育成のプログラムについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.DX人材育成の重要性と課題

まず、DX人材を社内で育成する重要性について改めて確認しましょう。DX人材には、デジタルに関する知識やスキルだけではなく、そうした技術を駆使してビジネスモデルを変革する能力が求められるため、自社の経営方針や顧客との関係性、現場の業務内容理解が必須となります。そのため、自社で業務経験を長く積んでいる社員をDX人材として育成、リスキリングすることが、DX人材獲得の早道となります。また、DXは全社一丸となって進めることが必要であり、社内における積極的な協力が欠かせません。新入社員や中途社員に任せるより、自社に長く在籍している社員がDXを推進した方が周囲からの理解を得やすいメリットもあります。

 

以上が、社内でのDX人材育成が重要な理由です。しかし、現実には育成が思うように進んでいない企業も少なくありません。現状散見される課題を整理しておきましょう。

 

【方向性が定まっていない】
そもそも「DX」というキーワード自体がまだ新しい概念ということもあり、自社のDXの方向性が定まっていないことが課題となっている場合があります。どういったスキルや経験が必要で、何をどのように学ぶべきかが曖昧なままだと、育成計画の頓挫は避けられません。まずは社員のスキルを可視化するなど、自社の現状を把握するところから始めるのがおすすめです。

 

【学習のモチベーションが低い】
DX教育を受けるメンバーのモチベーションが上がらないと、継続的な学習にはつながりません。その背景には、メンバーがDXの重要性を理解していないことやデジタルへの苦手意識を持っていることなどが考えられます。企業側は一方的に教育プログラムを押し付けるのではなく、DXに興味を持ってもらえるような学習スタイルを考案するなど、メンバーが自主的に学んでくれる環境づくりを行う必要があります。

 

【実務に活かせない】
座学の研修などを通して知識やスキルを学ぶことはできても、うまく実務に活かすことができないといった課題もあります。具体的には「DXを進めるにあたり、どの部署にどの業務を依頼すべきかわからない」、「座学で学ばなかったイレギュラーな事態が発生し、対応できない」などといった事態に陥っているケースが考えられるでしょう。とはいえ、実務に活かせなければ、学んだ知識が宝の持ち腐れになることは言うまでもありません。スキルを学んだ社員にDX推進を全て任せるのではなく、会社としてフォロー体制を整えておく必要があります。

 

2.効果的なDX人材育成プログラムに必要なもの

効果的なDX人材育成プログラムに必要な要素を5点ご紹介します。

2-1.DXの目的を共有する

まずは、DXを推進する目的を社員としっかり共有しましょう。差し当たり業務効率化を優先したいのか、まったく新しいビジネスモデルを生み出したいのかなど、目的に応じて求められる人材が変わるからです。何のためにDXをするかがきちんと定まっていないと、学習者のモチベーションが下がってしまいます。

2-2.育成計画の策定と育成人材の選出

次に、育成計画を策定し、育成人材を選出します。育成計画は「何を目的に」「いつまでに」「どんな社員を」「何人育成するか」の4つを定義することが重要です。作成の際は、社員が現在持っているスキルを可視化して一覧にまとめたスキルマップを作成することをお勧めします。誰がどんなスキルを持っているかだけではなく、スキルレベルも合わせて把握できるため、効果的な計画策定と育成人材の選出に役立つでしょう。

2-3.知識のインプットとマインド醸成

育成計画の策定と育成人材の選出が終わったら、いよいよ学習開始です。まずは研究や講義などの座学を通して、DXに関する知識やスキルを学びます。ハンズオン講義が近年のトレンドです。自ら手を動かして学習ができるため、より理解が深まりやすいでしょう。

 

単に知識をインプットするだけでなく、リーダーシップなどのマインド醸成も欠かせません。そこでポイントとなるのが、外部講師による講演です。どのようなマインドセットでDXを進めるべきか、どうやってDXを成功させたかを当事者目線で語ってもらえるので、DXを「自分ごと」として捉えやすくなるでしょう。

2-4.実行力をつけるOJTの実施

座学の次は、OJT(On the Job Training)の実施が重要です。研修などを通して学んだスキルやマインドセットは、実務に活かせなければ意味がありません。OJTの基本的な流れは、「Show(手本を見せる)」「Tell(説明する)」「Do(やらせてみる)」「Check(評価・指導)」の4つです。まずは社内限定で小さなプロジェクトを立ち上げ、少しずつステップアップしていくのが良いでしょう。

2-5.社内外ネットワークの構築

座学によるインプットとOJTを通したアウトプットを進めつつ、社内外のネットワークを構築しておくことも欠かせません。DXの推進には社内全体を巻き込む必要があるため、社内調整のための太いパイプをあらかじめ作っておく必要があります。また、IT業界はスキルのアップデートが激しく、自分のスキルを最新状態に保っておくためには、最新技術の情報交換をしている社外コミュニティへの参加などが効果的です。

3.DX人材を育成しやすい組織を作るには

業務を効率化するだけではなく、自社のビジネスや組織の在り方そのものの変革を目指すのが、DXの最終ゴールです。DXの成否は経営層から現場社員まで全員一丸となって取り組めるかにかかっているため、DX人材を育成しやすい組織体制の構築は必須といえるでしょう。本章では、そのためのポイントをご紹介します。

3-1.評価方法や給与体系の見直し

優秀なDX人材を育成できたとしても、後々その人材が退職してしまう可能性は十分に考えられます。そうなった場合、また1から新たな人材を育成しなければなりません。評価方法や給与体系の見直しを通して、DX人材が長期的かつ持続的に活躍しやすい体制を整えたいところです。具体的にはKPIの設定やパフォーマンスレビューの見直しなどが挙げられます。

3-2.DX人材の支援体制を整える

DXは全社を挙げての取り組みが必要ですが、実際にはDX担当社員に任せきりになるケースも多いのが現実です。DX担当社員はその業務のみに専念できるわけではありません。日々の業務と並行しながらDXに取り組まなければならないケースがほとんどでしょう。その際、周囲からのサポートがない状態だと、精神的にも肉体的にも大きな負担を抱えてしまいかねません。
繰り返しになりますが、経営層から現場社員に至る全社員の協力がなければDXは実現できません。まずは経営層がそのことを理解する必要があります。その上で、DXが必要な背景を社内に周知し、DXに取り組みやすい風土を醸成していくことが大切です。社内での支援体制が整えば、DX担当者の負担も少なくなるでしょう。

3-3.小さな成功体験を共有する

DX研修を終えたばかりの社員がいきなり大きなプロジェクトに取り組むと、途中で挫折する可能性が高いため、まずは小さなDXプロジェクトから取り組んでもらうことが大事です。たとえば、手動でチェックしていた業務へのRPA導入やSNSツールを使った広報活動などが挙げられます。それが業務改善や課題解決に結び付けば、立派な成功体験になるでしょう。
こうした小さな成功を積み重ねていく中で、DX推進に対する自信が担当者に生まれますし、成功体験を他の社員と共有することができれば、「自分もDXに関わっている」といった参加意識も社内で醸成されます。結果として社内でDXに対する理解や関心が高まり、担当者はよりDXを推進しやすくなるでしょう。

4.人材育成施策の事例

本章では、DX人材育成に関する具体的な取り組み事例をご紹介します。

 

【企業内大学】
企業内大学を設置することで、国立大学を含む教育・研究機関と連携しながら、質の高いデジタル教育を提供することが可能になります。リスキリングや新入社員研修を企業内大学で行うことも可能です。

 

【レベル別の育成カリキュラム】
全従業員のITリテラシー向上を目指すにあたり、レベル別の育成カリキュラムを採用している企業も存在します。初級・中級・上級とコースが、従業員のITリテラシーに合わせて無理なくステップアップしていける仕組みが構築されています。

 

【DX人材に軸を置いた採用活動とインターンシップ】
実践的なインターンシップを開催したり、応募者への説明会で社内のDX人材を紹介したりすることで、新卒採用の段階からDX人材やその候補者の獲得を狙う企業も存在します。こうした過程を踏んで採用された社員は自社の未来を担う人材として、高い志をもってDXに取り組んでくれるでしょう。

 

5.まとめ

企業が今後生き残るためには、デジタルの知識やスキルを持ちながら、自社のビジネスや風土を深く理解しているDX人材が不可欠です。ただ、企業としてDXをどう進めていきたいのかが決まっていないケースも少なくありません。まずは目的をはっきりさせた上で、DX人材の育成計画を立てましょう。知識のインプットとOJTを通じたアウトプットを繰り返しつつ、社内外にネットワークを構築することも大切です。また、DX人材が活躍しやすい体制を作るためには、組織のフォローも欠かせません。評価方法や給与体系の見直しも考慮にいれる必要があります。全社員がDXに対して当事者意識を持てるような風土作りもぜひ心がけてください。