COLUMN

2024.01.09 保険業界

【保険業界×AI】活用事例と導入ポイントをご紹介

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保険金査定、営業や問い合わせなど、保険業界では日々幅広い業務が行われています。煩雑で個人のプライバシーに関わる内容が多いため、AI(人工知能)を活用した業務効率化は急務の課題といえるでしょう。近年では、実際にAIを業務に役立てている企業も増えてきました。本記事では、保険業界におけるAIの活用事例と導入のポイントについて詳しく解説します。

1.保険業界のAI活用状況

保険業界でどのようにAIが使われているか、具体的な活用状況を3つ紹介します。

1-1.保険金査定の迅速化や最適な保険プランの提案

保険金査定は様々な要素が複雑に絡み合っているため、通常、対応に時間がかかりますが、AIを導入すれば大幅に時間を削減できます。その分、社員は示談交渉などに集中しやすくなるでしょう。また、AIでビッグデータを分析することで、顧客に合わせた最適な保険プランの見直しや提案が可能となります。

1-2.顧客ニーズに合わせた新商品の開発

AIをうまく活用すれば、顧客のニーズに合わせた新商品の開発も可能です。たとえば、自動車保険においては車内センサーの活用が挙げられるでしょう。車内センサーは、走行距離や運転速度などの情報を記録します。その内容をもとにリスクを予測し、安全運転を心がけている被保険者が有利になるような保険プランを考案できます。

1-3.ターゲットを絞ったマーケティング

もともとオーダーメイド型プランが充実している保険業界ですが、AIを導入することで、これまで蓄積されてきたデータを活用しやすくなります。政府が公開しているデータなども合わせて活用し、年齢や性別、地域などでさらにターゲットを絞り込めば、より顧客の需要にマッチしたマーケティングや営業活動につなげられるでしょう。きめ細かいニーズに対応できる満足度の高いプランを提案できれば、売上アップにも直結します。

 

2.生命保険会社・損害保険会社でのAI活用事例

生命保険会社や損害保険会社におけるAIの活用事例や取り組みを紹介します。

2-1.新規顧客・被保険者対応

新規受付や問い合わせなど、保険業界では様々な場面で対応が求められます。AIを導入することで、待ち時間などを大幅に削減した対応が可能です。

自動車保険の補填プラン提案

自動車保険に関する数百万件以上の契約内容をもとに、ユーザーがウェブに入力した情報をAIがリアルタイムで個別分析し、顧客一人ひとりに合わせた補填プランを提案します。従来よりも納得しやすい補償内容や保険料が提示されたことで、成約率のアップにも繋がることが見込めます。

AIレコメンドシステムによる補償プラン提案

AIレコメンドシステムは、顧客一人ひとりのニーズに合わせた保険プラン提案に役立ちます。過去のデータ数千万件をAIが学習し、契約情報や希望予算などから補償プランが自動作成されます。担当社員は自身の端末に送信されるレコメンド結果をもとに、顧客への提案を行います。病気やけがの保険、損害賠償保険、所得補償保険などさまざまな選択肢の中から顧客が希望する保障を選択して組み合わせることも可能です。
なお、AIは日々蓄積されていくデータも継続して学習し続けるため、時代の変化に即したプラン提案も可能です。

スマホでの保険相談サービス

スマホとLINEさえあれば時間や場所を選ばず、いつでも保険の見直し相談にのっています。様々な保険プランの中から、同じ補償内容でより保険料が安いものをAIが自動で提案します。資料請求や申し込みもLINE上で完結させられることが注目すべき点です。

AIチャットボット・オペレーターによる窓口業務

AIチャットボット・オペレーターは、カスタマー窓口業務の円滑化に役立てられています。従来は有人の窓口で様々な保険相談や問い合わせを受けてきましたが、オペレーター一人ひとりにかかる業務負担の大きさが長年の課題でした。そこで、AIチャットボットやAIオペレーターを導入することで、24時間365日いつでも問い合わせや手続きに対応できる体制が整い、人手不足の解消も可能です。顧客側も「窓口になかなか繋がらない」といったストレスから解消されるだけでなく、人と同じように会話しながら手続きができるため心理的安心にも繋がり、大きな反響を呼んでいます。

AIキャラクターによるウェブ接客

AIキャラクターを召喚する装置を使ったウェブ接客アプリケーションの開発が進められています。キャラクター表示に加えて、人が近付いたことを感知するセンサー、音声を認識するマイクなど、様々な機能を組み合わせたサービスです。現在は実証実験の段階であり、空港で海外保険への加入を希望する方向けのサービスを提供しています。

マッチングシステムを使った営業員紹介

クライアントと相性の良い営業員を紹介するマッチングシステムも登場しました。顧客の悩みや興味関心、サイト閲覧履歴などをAIが分析し、適切な解決策を提案できる営業員を見つけます。マッチ指数も表示されるので、参考にできるでしょう。

一体型保険プランの提案作成時間を短縮

生命保険と損害保険の一体型プランを取り扱っている企業では、各種保険の枠組みを超えた提案作成が進められてきましたが、顧客の属性や資産情報、保険への考え方などをもとにAI分析を行うことで、従来は数十分かかっていた提案作成を数分にまで短縮することができるようになります。

2-2.その他事務効率化

新規顧客や被保険者への対応だけでなく、スムーズな保険金算出などの事務効率化においてもAIは活躍しています。各社で実際に行われている事例を紹介します。

天変地異による損害に合わせた保険金を算出

台風などの天変地異で被災した建物の損害がわかる画像をスマホやパソコンなどから送信することで、AIが損害箇所を解析し、保険金が自動で算出されます。従来必要だった修理見積書の提出がAIの導入で省略されたため、被災した顧客の迅速な生活再建に役立てられています。

不正請求の迅速かつ正確な検知

保険金の不正請求検知システムは過去の不正事案をAIに学習させ、不正と思われる請求を導き出します。保険金の請求処理は、熟練者でも時間がかかることが大きな課題とされてきましたが、AIは人間よりも遥かにスピーディーかつ正確に不正請求を検知できます。このシステムによって担当社員の負担が減り、よりクライアントに寄り添った業務が可能となります。

書類点検工数の削減

膨大な事務処理をスムーズにする目的でAIが導入されています。従来は、新規受付書類の点検作業で手間とコストがかかっていましたが、AI-OCRによる自動点検により、作業の工数を大幅に減らすことができます。また、申込書や帳票類をデジタル管理することで、後続システムへのデータ自動連動も可能になります。

生命保険への加入可否判断を自動化

保険加入希望者の属性や健康診断の数値などを材料に算出された入院日数の期待値を健康な方と比較し、その倍率に応じて加入可否をAIが判断します。従来は医療の専門知識が求められる業務でしたが、AIの導入により業務負担が大きく減っています。

本人確認書類のデータ化、ペーパーレス化

本人確認書類の内容認識と認証を行うAIシステムを導入することで、各種書類のデータ化とペーパーレス化が可能となります。運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど、本人確認書類は機密情報を多く含みますが、データ化によってそれらが守られやすくなるのも大きなメリットです。

ドローンとAIを使った損害調査

ドローン撮影とAI解析を駆使した損害調査においては、ドローンで撮影した空撮画像をもとに、損害状況がわかる画像データが作成され、その画像をAIが解析することで、損害状況や損害額が自動算出されます。従来はこうした報告書の作成に数ヶ月間かかっていましたが、現在は工数が大幅に削減されています。

自動車事故の修理内容を自動算出

自動車事故の修理見積書点検にAIを導入する取り組みも始まっています。AIは1億枚以上の車の損傷画像を学習しており、その内容をもとに修理方法や修理時間を算出します。

 

3.保険業界でAIを導入する時のポイント

保険業界でAIを導入する際に押さえておきたいポイントを4つ紹介します。

3-1.目的を明確に

ひとくちにAIといっても、その活用方法は様々です。保険査定を迅速化したいのか、コールセンター業務を効率化したいのかなど、導入目的を明確にする必要があります。目的にそぐわないAIソリューションを導入してしまった場合、経営に大きな影響を与えかねません。どの業務でどんな課題が生じているのか明らかにし、AIの導入によってどう解決できるのかを把握しておきましょう。

3-2.資金の確保

資金確保も大切なポイントです。AI導入には大きなコストがかかります。自社で開発するか、外注するかで費用が変わってくるため、慎重に検討してください。会社の財政を圧迫しないよう、あらかじめ予算を調整しておく必要があります。また、導入後も定期的なシステム改善やメンテナンスは必須となるため、その分のコストも考慮しなければなりません。

3-3.人材の確保、育成やマニュアルの整備

人材の確保も急務です。AIの開発や活用には専門知識が求められます。AIの知見が不十分なまま開発や運営を進めると、エラーや不備が起こった際に対処が難しくなります。AI分析に長けた人材を募集する以外にも、予算が許すのであれば、人材の育成や自社内でマニュアルの整備を行うなどの対策が取れるでしょう。コストを無駄にしないためにも、AI導入後のスムーズな運営体制をしっかり整えておくことが大切です。

3-4.処理プロセスの透明化

忘れられがちなのが、処理プロセスの透明化です。AIは煩雑な計算やルールの抽出ができる一方で、処理プロセスが目に見えづらいというリスクも孕んでいます。なぜAIがその補償額を算出したのか明確な根拠がないと、クライアントとのトラブルに繋がりかねません。計算結果に納得できるよう、処理プロセスを明確にしておきましょう。

 

4.まとめ

AIは保険業界においても大きな存在感を持ちつつあります。保険は私たちの生活になくてはならないものですが、煩雑な事務手続きにかかる時間とコストは担当社員と顧客の双方にとって大きな負担でした。AIの導入は社員の業務負担を減らすだけでなく、顧客にとってより満足度の高いサービスの提供にも繋がります。すでにAIを活用している企業も多く、今後も活用事例は増えていくでしょう。