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2024.01.09 DX導入

ハイパーオートメーションとRPAの違いとは!?

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業務を自動化するための取り組みとしてRPAを導入する企業が増えてきましたが、さらに上位の自動化システムとして「ハイパーオートメーション」が注目されています。人手不足や働き方改革が叫ばれる中、今後、この概念は企業にとって重要になるでしょう。本記事では、ハイパーオートメーションとRPAの違いや、ハイパーオートメーションのメリットについて詳しく解説します。

1.ハイパーオートメーションとは

ハイパーオートメーションとは、様々な技術やツールを駆使しながら複数の業務を自動化する仕組みのことです。アメリカのIT調査会社であるガートナーが提唱した概念で、「2020年の戦略的テクノロジートレンドトップ10」として紹介され、大きな話題を集めました。複数の業務にまたがる複雑なプロセスを連動して自動化できるため、業務効率化に向けて導入する企業が増加しています。

1-1.ハイパーオートメーションに用いられる主な技術

どのような技術がハイパーオートメーションに用いられるのかを解説します。ハイパーオートメーションは複数の技術やツールを組み合わせることで業務自動化を目指す仕組みです。

AI

AIは、IT技術の中でももっとも広く知られています。大量のパターンやデータを取り扱い、問題解決や計画立案などに役立つ手法を導き出すのに役立ちます。音声や画像など、非構造化データについても正確な認識や分析が可能です。

機械学習

機械学習は、AIの中心ともいえる技術です。膨大な量のデータを学習させ、人の手では見つけ出せないような隠れた法則やパターンを抽出します。その結果をもとに、コンピューターが自動的に推論や判断を行います。

BPM(Business Process Management)

BPM(Business Process Management)とは、業務を最適化するための管理手法を指します。ハイパーオートメーションの導入にあたり、まずは業務全体の流れを把握しなければなりません。それぞれのプロセスを可視化し、抱えている課題や問題点を洗い出すのがBPMです。BPMの実行ツールは、BPMS(Business Process Management System)と呼ばれます。

H4 EAI(Enterprise Application Integration)

EAI(Enterprise Application Integration)とは、企業内で使われる複数の業務システムの統合を指す言葉です。企業で取り扱っているデータは、部署や業務ごとで使用するシステムが異なるケースが多いのが一般的です。しかし、システムが異なるとデータ管理に困難が生じやすく、データの重複などの問題点もあります。EAIは、システム間の連携を図ることでデータの一元管理を目指そうとする考え方です。

ETL(Extract/Transform/Load)

ETLとはデータ統合の一連のプロセスのことで、「Extract(抽出・収集)」「Transform(変換・加工)」「Load(書き出し)」の頭文字をそれぞれ繋げた言葉です。データを活用した業務を行うには、まず目的に合わせたデータを集める(Extract)ところからスタートします。収集したデータはそのままでは意味を成さないため、一定のルールに基づいた変換・加工(Transform)が必要です。形式が整えられたデータは、最終的にデータウェアハウスなどのデータソースに書き出されます(Load)。ここまでの一連の流れを行うのが、ETLツールです。

iPaaS(Integration Platform as a Service)

iPaaS(Integration Platform as a Service)とは、クラウドサービスの1つです。クラウド上で使用するアプリケーションやシステムの統合を目指します。複数のクラウドサービスにまたがるデータの連携も可能です。

LCAP(Low Code Application Platform)

LCAP(Low Code Application Platform)とは、「ローコード開発」と呼ばれるプラットフォームです。なるべくソースコードを書かずにアプリケーション開発を行う技術で、短期間・低コストでの開発が期待できます。ローコードに対し、そもそもソースコードを書かないNo-Code(ノーコード)と呼ばれる手法も登場しました。ノーコードの場合は、プログラミング言語の知識がなくても開発に携われます。

OCR(Optical Character Recognition)

OCR(Optical Character Recognition)は、日本語で「光学文字認識」と訳されます。文字や画像などを読み取り、コンピューター用のテキストに変換する技術のことです。データ入力の自動化などに使用されています。

RPA(Robotic Process Automation)

RPA(Robotic Process Automation)は、業務自動化ツールとして有名です。PCを使った単純な事務作業を人間の代わりに行います。具体的には、伝票入力やリスト作成、データ更新などが挙げられるでしょう。

 

2.ハイパーオートメーションとRPAの違い

業務自動化と聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるのがRPAではないでしょうか。RPAはハイパーオートメーションに用いられる技術の一種であり、RPAだけが自動化のすべてを担っているわけではありません。ここでは、両者の違いについて解説します。

2-1.自動化できる対象範囲の違い

ハイパーオートメーションとRPAの最も大きな違いは、自動化できる対象範囲の違いです。RPAは伝票入力やリスト作成、データ更新など、PC上で行われる特定の業務のみを自動化します。一方で、ハイパーオートメーションは作業自体の自動化だけではなく、データ収集や分析、効果測定、レポーティングなど、業務全体にまたがる自動化が可能です。業務が複数の部門に分かれている場合でも連動して自動化できるため、スムーズな業務遂行が可能になります。

2-2.非構造化データの処理の可否

あらゆる業務の中には、人間による判断が必要なプロセスが含まれています。たとえば、電子メールやSNSの文章、画像、音声、動画などの処理が挙げられるでしょう。RPAでは、このような非構造化データの自動処理には対応できませんでした。一方で、ハイパーオートメーションには様々な技術が組み込まれているため、複雑な非構造化データの処理も可能です。

2-3.技術の組み合わせ

ハイパーオートメーションは、RPAも含め複数の技術を組み合わせて業務全体を自動化します。AIやiPaaS、LCAP、OCRなど、様々な技術の特徴が活かされるからこそ、大規模で複雑な自動化処理が可能になるのです。近年は、RPAの中にもAIなどの技術を活用したものが登場してきました。しかし、あくまでRPAとしての側面が強く、ハイパーオートメーションのように業務全体を自動化できるほどの技術は組み合わされていません。

 

3.ハイパーオートメーションのメリット

ハイパーオートメーションを導入することで得られる様々なメリットを4つ紹介します。

3-1.スピーディーな業務対応

ハイパーオートメーションの導入は、スピーディーな業務対応を可能にします。人間よりも格段に速く作業ができ、24時間365日休むことなく稼働できるのが、ハイパーオートメーションの大きな魅力です。毎日一定の労働力を確保しているのと同じ状況を作れるため、業務の質を落とさずに作業できますし、人間による作業で起こりがちなミスや不正の防止にも繋がります。

3-2.人手不足の解消

ハイパーオートメーションによる自動化は、人手不足に悩む企業にとって特に大きなメリットです。業務を自動化すると人間が介在する必要はなくなるため、その分の人員を人手が足りていないセクションに回せるからです。また、ハイパーオートメーションがレポートする分析結果は、ビジネスアイデアの創出や経営判断の材料にもなります。企業全体の生産性を上げるという意味でも、ハイパーオートメーションは非常に有効です。

3-3.専門業務も標準対応

アプリケーション開発や統計学に基づいた分析など、高度な知識やスキルが必要な業務はこれまで専門的な人材が携わっていました。実は、このような専門性の高い業務もハイパーオートメーションによる自動化が可能です。誰でも同じ結果や成果を得られやすいため、通常業務として標準化できます。「その人以外、誰も作業内容がわからない」といった属人化の問題が解決できるでしょう。

3-4.広範囲の業務を自動化

AIやRPAなどを単体で使うだけでも自動化はできますが、その範囲には限度があるといわざるを得ません。ハイパーオートメーションは様々なIT技術が組み合わされているため、広範囲にわたる業務を自動化できます。文書や画像、音声、動画などの非構造化データも取り扱えるため、部署や部門をまたいでの自動化実現も目指せるでしょう。

4.ハイパーオートメーションのデメリット

一方で、ハイパーオートメーションを導入するにあたっては、デメリットやリスクも存在します。ここでは4つご紹介します。

4-1.業務プロセス全体の見直しが必要

ハイパーオートメーションの導入にあたり、まずは業務プロセス全体の見直しから始めなければなりません。多くの組織では、様々な部門や部署の業務が複雑に関係し合っており、それぞれの業務を連携させて自動化を目指すには、それだけ要求や要件の定義付けも厳しくなります。場合によっては、組織体制そのものの変更が必要になるかもしれません。

4-2.人員配置の変化

自動化は、これまで人間が行っていた作業を減らせる一方、システム管理や監視、トラブルシューティングなど、新たな業務を生みだす可能性もあります。もし、長年事務作業を担当してきたスタッフが突然システム管理を任されることになった場合、そのスタッフに心身ともに大きな負担がかかってしまうこともあり得ます。適正な人員配置を行うためにも、個人の能力を把握しておくことが大切です。

4-3.導入費用と時間の確保

当然ながら、ハイパーオートメーションの導入には大きな費用と時間を要します。自動化するには業務データの一元化が必要な上、場合によってはシステムやツールのアップグレードも行わなければなりません。また、ハイパーオートメーション導入後のシステムやツールの使い方に関して、研修やトレーニングも必須です。ハイパーオートメーションは自社にどのようなメリットをもたらすのか、費用対効果なども踏まえながら慎重に検討してください。

4-4.サイバー攻撃のリスク

様々な業務の自動化は便利な反面で、サイバー攻撃を受けやすいことも頭に入れておきましょう。セキュリティ対策がきちんとなされていないと、ウイルス感染などの危険が生じます。サイトの内容改ざんや個人情報漏洩などの問題が起こると、信用の失墜にも繋がりかねません。また、企業の名を騙った悪質なトラブルに巻き込まれるリスクもあります。ハイパーオートメーションを導入する際は、万全なセキュリティ体制を整えておくことが大切です。

 

5.まとめ

RPAは、特定の事務作業を自動化するのに特化しています。一方、ハイパーオートメーションは様々な技術やツールを組み合わせることで、複数の業務をまとめて自動化する仕組みです。業務効率の改善、生産性の向上はもちろん、人の手で行う作業が減った分、その人員を別の部署に配置できれば人手不足の解消にも繋がるでしょう。様々なメリットがある反面、導入までには業務プロセスの見直しや、費用と時間がかかるデメリットもあるため、入念な検討を行う必要があります。