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2023.09.08 DX導入

AI-OCR導入によるメリット

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AI-OCR導入によるメリット

現代社会においてデジタル化は急速に進行しており、さまざまな分野で影響を与えています。ビジネスにおいても、作業の効率化や顧客体験の向上、新たなビジネスモデルの創出など、さまざまな側面で影響を及ぼしています。
今後、更に業務効率化やサービス改善を図っていく必要がある中で注目されているのが「AI-OCR」です。AI-OCRは、「OCR(Optical Character Recognition=光学文字認識)」に、AIや機械学習を組み合わせることで、より高度な処理能力と認識能力を持たせたもので、これまでにないスピードと精度で文字データの認識し、処理することができます。AI-OCRはビジネスだけでなく、個人のライフスタイルにも大きく影響を与えます。特徴や真価を理解することは簡単ではありませんが、AI-OCRを活用することで、ライフスタイルの可能性を最大限に引き出し、これからの情報社会をよりスムーズに、そして効率的にするための一歩になるかもしれません。

この記事では、AI-OCRの基本的な概念やメリットとデメリット、活用事例まで詳しく説明します。

1.AI-OCRとは何か

1-1.OCRとは

OCR(Optical Character Recognition=光学文字認識)とは、スキャンした書類や写真の中にある文字を認識する技術のことを言います。私たちはOCRの力を借りて、印刷された文字や手書きの文字をデジタルデータへと変換し、それを保存や検索、編集することができます。OCRはビジネス分野だけでなく、文書のデジタル化や情報管理を必要とするさまざまな領域で活用されています。
しかし、従来のOCRは認識精度に限界があり、特に手書き文字や特殊フォントの精度が低かったことから、認識結果に誤りが含まれることも少なくありませんでした。また、複数の言語が混在していたり、背景と文字が混在している場合の認識は難しいなど、使用上の制約がいくつかありました。

 

1-2.AIがOCRを進化させる

これらの限界を突破するため、研究者たちがAIをOCRに組み込むことを試みました。
近年、深層学習と機械学習の進化が顕著であり、これによって高度なパターン認識と特徴抽出が可能となりました。これらの技術をOCRに応用することで、文字認識の精度が大きく向上しています。

 

1-3.AI-OCRの誕生

こうした人工知能のアルゴリズムや機械学習モデルを用いて認識能力を向上させたものが「AI-OCR」です。AI-OCRは、従来のOCRでは難しかった手書き文字や複雑な背景、破損した文書からもテキストデータを抽出することができ、より高精度で幅広い文字認識が可能になりました。
AI-OCRの登場により、企業は更に時間とコストを節約し、業務効率を上げることが可能となっています。また、個々のユーザーも、レシートや書類、手書きメモをデジタルデータとして保存したり、外国語の翻訳に利用するなど、日常生活の中でAI-OCRを活用することができます。

 

2.AI-OCRの主な種類

1. 汎用・定型フォーマット型

抽出精度が高く、幅広い媒体に対応可能ですが、事前にどの範囲を認識するかのフォーマット定義が必要です。

 

2. 汎用・非定型フォーマット型
認識範囲フォーマットが不要で、幅広い媒体に対応可能ですが、事前にAI学習が必要で、学習なしでは認識精度が低いことがデメリットとして挙げられます。

 

3. 業務特化・非定型フォーマット型
事前の認識範囲フォーマットもAI学習も不要で、既存のシステムとの連携も可能ですが、特定業務に特化した認識処理しかできません。

 

3.AI-OCRの活用事例や活用メリット

3-1.手書き文字の認識

現在では、手書き文字や特殊なフォント、さらには異なる言語にも高い認識能力を持つAI-OCRが存在しており、医療機関で患者の手書きの診断書や処方箋をデジタル化したり、調査会社や会社のマーケティング部門において、大量の手書きアンケートを自動的に読み取り、集計することなどに活用されています。
AI-OCRを活用することで、手作業での文書処理やデータ入力が不要になるため、人的リソースや時間を節約することができます。すべての作業のデジタル化を目指してデバイスやシステムの入れ替えを行うことは、コスト面で現実的でない場合もありますが、目視による資料のチェックや手入力の部分を省力化するだけでも業務効率化へとつながると言えるでしょう。

 

3-2.Faxや名刺のペーパーレス化

AI-OCRはFAXや名刺を電子化し、それに伴うペーパーレス化も可能とします。受信したFAXやスキャン文書からテキスト情報を抽出したり、名刺から連絡先情報を抽出して保存、管理することが可能です。それにより、オフィスの中で大量のファイルや文書を保存するためのスペースをなくすことができます。
さらに、FAXや名刺を含めた紙ベースの書類は、処理が済んだら破棄することも少なくありません。本来であれば破棄されて失ってしまう情報も、デジタル化して保存することで将来的に役立つ情報資産が増えることにもつながります。

 

3-3.手入力や目視によるチェックのミスの軽減

AI-OCRによって文書のデータ化が進むと、手入力や目視作業の手間が省けます。もちろん、顧客や取引先、ユーザーから送られてくるデータに誤りがある場合もあるため、確認にかかる工数をゼロにすることはできませんが、大幅な削減につながるのは確かです。

 

3-4.情報の一元化や検索、共有

AI-OCRで紙文書の情報をデータベース化、一元化できれば、情報の検索や共有が簡単に実現されます。例えば、キーワードやフレーズに基づいた検索も可能ですし、オンライン上でデータを共有することで、紙ではできなかった同時使用ができます。リモートワークや移動中の情報共有も容易です。

 

3-5.クレーム処理

保険会社では保険金請求の際、クレームフォームや医療記録など複数の文書を確認する必要があります。AI-OCRを活用すれば、高速かつ自動的に処理することができ、その後の処理でクレーム処理に関する文書や通知の自動生成を行うことも可能なため、クレーム対応の時間を大幅に短縮して顧客サービスを向上することにつながります。

 

このようにAI-OCRは金融業界におけるデータ管理の効率化、そして顧客体験の向上に貢献することができ、DXにおいて重要な役割を担っていると言えるでしょう。

4.AI-OCRのデメリット

4-1.導入コストがかかる

最も大きなデメリットとしては、導入コストがかかることでしょう。AI-OCRの導入にはハードウェアやソフトウェアの導入、システムのカスタマイズ、トレーニングなどが必要でかなりの費用がかかります。
昨今はさまざまなAI-OCR製品が存在しているため、自社の特徴や課題に合った製品を選ばなければミスマッチになってしまう可能性も否めません。ですが、マッチした商品を選ぶことができれば、業務効率化にも繋がり、長期的なメリットが見込めるため、導入を検討するのであれば、課題をしっかり洗い出したうえで比較・検討していくことが重要です。

 

4-2.文字認識率は100%ではない

AIを活用することで格段に文字認識率が高くなったことは事実ですが、100%の認識率を実現できるわけではありません。私たち人間にも見間違えやミスがあるように、AI-OCRであっても誤認識してしまう可能性はあります。
ただ、学習を重ねていくことで認識精度は高くなっていくため、従来のOCRよりは遥かに高い精度を実現できるでしょう。AI-OCRの結果を人間が確認して納品するのも一つの手段であると言えます。

 

4-3.縦書きに弱い

縦書きの帳票には対応していないケースもあります。横書きと比べて縦書きの文書の方が少ないため、認識学習データが少ない傾向にあるからです。とはいえ、学習データさえ蓄積されれば解消できる問題ですので、将来的に大きなデメリットとして捉える必要はありません。

 

5.AI-OCRにありがちな誤解と導入に必要なこと

5-1.使いづらかったのは過去のOCR

過去のOCR技術は制約や課題が多く、使いづらいと感じることも多かったのは事実です。OCRだけでなく、音声認識による文字起こしなども含め、昔はほとんどの認識技術が一般的な事務処理や現場のニーズには適用できないと言われてきました。しかし、今の認識技術の精度は非常に高くなってきており、古い認識をアップデートできていないと、本来効率化できる作業もそのままになってしまいます。現在のOCR技術の進化を認識し、まだ活用したことがない場合は導入を検討してみることをお勧めします。

 

5-2.認識のアップデート

ベテランの事務職の方や役職者がいる場合、過去の経験や知識のみで話されることがあります。前項と同じく、古い情報をアップデートしていないままだと、OCR技術の導入が遅れ、ひいては他企業と比べて競争力を落とすことになりかねません。現段階において「ベテランの意見」がOCRや他のIT技術の受け入れが進まない原因になっているのであれば、古い企業体質であることを自覚し、新しいものを受け入れることや技術に対する認識のアップデートを推奨しましょう。システムに使われている技術が古ければ、処理が遅かったり精度が低かったりするのは当然です。問題なのは古い情報を基準として、現状のビジネス環境を判断してしまうことですので、OCRの精度が低いといった誤解も含めて、ベテランやその他の人の主観のみで判断しないようにしましょう。

 

5-3.「自分でやった方が早い」という誤解

事務作業に長けている方ですと「自分でやった方が早い」と考えてしまいがちです。確かに一部のケースでは、AI-OCRを使用せずに自分で作業を行う方が効率的な場合もあります。行う作業が1〜2件などの少ない件数であれば問題ないでしょう。しかしその作業が何百件、何千件とある場合はどうでしょうか。AI-OCRであれば、スキャナに帳票を差し込めば自動で読み取ってくれるため、手作業を行う必要がなく、作業時間を劇的に短縮することができます。

 

5-4.さらなるDXの推進や働き方改革も視野に入れる

AI-OCRの導入が進めば、必然的にDXの推進や働き方改革の前進につながります。ビジネスの環境が変化することは企業側や働く側にとって不安もありますが、より効率的に利益を出すためには、会社全体としてDXに取り組んで行く必要性があります。AI-OCRやDXについての基本的な知識を獲得し、どのようにしてビジネスに適用できるかを検討したり、一部の業務プロセスを改善することから始め、徐々に拡大していくなど、変化に対して前向きな姿勢で進めていくことが非常に重要です。

6.AI-OCRの金融業界における活用

金融業界は取引の規模が大きく、複雑であるため、DXの効果と必要性が高いとされています。適切な技術を活用することで、より効率的で競争力のある業務を展開し、顧客満足度を向上することが求められていますが、その中でも、 AI-OCRの導入は特に重要な取り組みとなっています。
金融業界は取引明細、契約書、証明書など、多くの紙文書を扱っていますが、これらの文書のデジタル化は、データの管理、分析、セキュリティ確保といった面で大きな課題となっています。 AI-OCRは、こうしたデジタル化の精度を高めることができる、金融業界にとって重要なソリューションといえるでしょう。

 

■導入事例1

ある企業では、AI-OCRと従来型OCRを組み合わせて、人の手でのみ行っていた不定形帳票の処理業務を自動化しました。これによりランニングコストの圧縮を実現し、主要な帳票についてはコストがほぼ半減しました。

 

■導入事例2
ある企業では、紙書類に書かれた情報を顧客管理システムに入力する業務の負担を軽減するため、AI-OCRを導入しました。従来のOCRでは難しかった複数種類の書類読み取り自動化をAI-OCRによって実現した結果、入力業務時間を半減させることに成功しました。

 

7.まとめ

本記事では、AI-OCRについて詳しく解説してきました。
近年、長時間労働が問題視されていることから、「働き方改革」として労働時間が見直されるようになりました。しかし改善はまだ道半ばで、残業代なしで業務をこなさなくてはならない状況に陥っている企業も少なくありません。
そうした状況に陥る理由のひとつとして、業務の量が従業員の数に見合っていないことが挙げられますが、それを解決する手段として注目されるのが、AI を活用した業務の自動化です。最近ではさまざまな業務を効率化する AI ツールがリリースされており、その中でもAI-OCRは重要視されている技術です。適切に活用することで、繰り返し作業を自動化し、時間と労力を価値ある業務に集中させることができます。
業務全体の効率と生産性を向上させるためには、自身の情報をアップデートし、新たな技術の導入を視野に入れることが大切です。