COLUMN

2023.08.03 官公庁業界

DXで自治体が変わる!?自治体がDXに取り組むためには

#AI活用 #DX事例 #自治体DX

民間企業はもちろん、自治体についてもDXの必要性は強く提唱されています。
2021年9月1日にデジタル庁が発足したことで、自治体のDXを推進する動きは全国で活発化していくことでしょう。自治体がDXを推進することで、具体的にどのような成果を得ることができるのでしょうか?

本記事では、自治体DXの概要や実現に向けた取り組みを詳しく解説します。

1.自治体DXとは?

「自治体DX」とは、自治体が抱える課題を解決するためのDX施策を指す言葉です。2020 年に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」では、目指すべきデジタル社会として「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」というビジョンが示されています。
民間企業だけでなく自治体も積極的にDXを推進することで、デジタル社会を実現することが求められています。そうした自治体DXの中でも近年急速に動きがあるのが、自治体BPRです。次項では自治体BPRについて詳しく説明します。

2.自治体BPRとは?

BPRとは「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」の略で、日本語に訳すと「業務改革」や「業務再設計」という意味で使われています。つまり自治体BPRとは、自治体が業務目的を達成するために、業務プロセスを再構築することを意味します。
民間企業では、業務改善や効率化に関わるサービスを比較的速く導入することができますが、自治体や行政は業務改善のための予算取得や、改善方法の検討・申請・承認に長い時間が必要とされ、導入が遅れるケースが多いです。
自治体BPRを進めるためには、中長期的なスパンでの業務プロセスの見直しと、定期的にプロセス改善できる仕組みを構築することが必要となります。

3.自治体DXが進まない要因と解決策

1.自治体に残るアナログ文化

民間企業ではペーパーレス化が普及しつつありますが、自治体では依然として申請や届け出といったやりとりを紙で行う場合が多いです。こうしたアナログ文化が続いている背景には、これまで根付いてきた慣習やデジタルに移行するための人材の不足、デジタル移行により一時的に増加する業務量への懸念等が挙げられます。紙での手続きや文書の管理を行うことは、書類の保存場所の確保や紛失の恐れなどのデメリットが多くあるため、RPAツールやクラウドストレージなどを用いてDXへ舵を切る必要があります。まずは意識改革や業務構造の根本的な見直しを行っていきましょう。

 

2.デジタル人材の不足

DXが進まない原因としてよく挙げられるのが、デジタル人材の不足です。こうした人材は民間企業でも不足しており、日本全体の大きな課題とされています。
解決に必要とされるのは、デジタル人材への教育投資とアウトソーシングです。短期間で解決する問題であればアウトソーシングに依頼することも手段として存在しますが、一時的な解決に過ぎません。アウトソーシングと共に人材への投資も行い、2軸で人材不足を補っていきましょう。

 

3.行政と住民のコミュニケーション不足
行政組織と住民のコミュニケーション不足もDXが進まない原因の一つです。マイナンバーカードはその最たる例でしょう。マイナンバーカードを利用することは、行政手続きを簡素化できるため、住民の利便性が高まることは間違いありませんが、メリットが十分に伝わらないが普及を妨げている大きな要因だと言われています。
コミュニケーション不足を解決するため、情報を正しく、かつ魅力的に住民に伝える必要があります。

 

4.政府が目指す自治体推進計画

1.情報システムの標準化・共通化
まず自治体が取り組むべきとされているのは、税金・保険・育児などの主軸となる17の情報システムの標準化・共通化です。自治体間でシステムを共同利用することであらゆるサービスの連携運用を行い、業務の効率化や自動化を大きく推進します。また、職員の事務作業を軽減して、捻出した時間や財源を国民のためのサービス提供に充てることが期待されています。住民側から見ても、手続きの簡素化や迅速化といった効果が期待されます

 

2.マイナンバーカードの普及促進

マイナンバーカードは、住民の個人情報管理を一元化するうえで重要な役割を果たし、現在も保険や納税、行政サービスを受ける際の手続きをマイナンバーで実施できるような体制が構築されつつあります。政府は、2022年度末までにほぼ全国民にマイナンバーカードを普及させることを目標としていましたが、総務省の調査によると、現在の保有率は77%にとどまっています。引き続き、マイナンバーカードの普及を促進していくことが自治体DXに繋がります。

 

3.行政手続のオンライン化
住民からの申請件数が多い行政手続きについては、優先的にオンライン化が進められています。これが可能になれば、住民が窓口に出向く手間もなくなり、利便性向上につながります。

 

4.AIやRPAの利用
AIやRPAを導入して、膨大な作業を自動化する取り組みも自治体DXには欠かせません。少子化の影響による人材不足を補うには、業務を自動化して効率化を図ることが重要です。

 

5.テレワークの推進
職員が育児や介護等のライフステージに合わせた多様な働き方ができるよう、ICTを活用したテレワークが推進されています。テレワークの実現は、職員のワークライフバランスを保つことはもちろん、業務効率化の観点からも重要です。政府は実証実験をはじめ、多方面からの導入事例・ノウハウを自治体に共有して、自治体へのテレワーク普及を促進すると述べています。

 

6.セキュリティ対策の徹底
近年懸念が高まっているのが自治体のセキュリティ対策です。行政手続きのオンライン化やテレワークが進むと、個人情報や機密情報の流出が懸念されます。公共機関を狙ったサイバー攻撃は世界的に増加しており、日本も例外ではありません。具体的な施策としては、総務省が認定するセキュリティレベルの高いクラウドサービスへの移行などが挙げられます。

5.自治体DXの導入事例

1.体制整備参考事例

ある自治体ではアンケート調査等を通して市町村の課題やニーズを把握した上で、専門家の派遣やDX推進研修等を通じ、ITリテラシーの底上げを図りました。
県・市町村・民間企業で組織するICT利活用推進協議会と連携しながら市町村支援を実施し、結果として、各自治体における課題やニーズの根幹部分が可視化され、県全体のDX推進につながっています。

 

2.人材確保・育成参考事例

ある自治体ではDX事業を担う人材の育成として、役職別に人材育成支援を充実化させ、目的に応じた個別研修を実施しました。デジタルツールを活用する人材(係長級以下)向け、管理職向けにそれぞれ異なった人材育成支援を行っています。
この施策の背景として、人口縮減時代において持続可能な行政サービスを提供できる「スマート自治体」を実現するために、デジタル領域で業務変革を進める職員が必要不可欠であると考えられたことが挙げられます。
また、この施策においては「働き方改革ロードマップ2.0」に沿った全庁的なDX人材の育成と配置が行われており、今後は人事・研修・業務改革・デジタルといった部門を横断して組織されるプロジェクトチームを設置し、定期的に人材育成の進捗を確認し、全庁的な育成を推進する予定のようです。

 

3.内部DX参考事例

ある自治体では、マイナンバーカードを活用した窓口サービスを設置しました。この取組みはマイナンバーカードから4つの情報を読み取ることで、申請者が書類に記入する手間を省き、住民サービスの向上と職員負担の軽減を図るものです。
「高齢者・障害者相談コーナー」が、区役所の中でも特に職員の負担が大きい部署であり、この取組みを進めた結果、1人当たりの手続きに平均30分〜1時間弱かかっていたものが、約20分ほどで完了するようになりました。また、住民が受けられるサービス一覧が手元に残るため、住民側からも分かりやすかったとの声があったようです。職員の窓口業務負担を軽減でき、マイナンバーカード等からの正しい情報を反映した申請書が作成できるこの窓口サービスは、今後も多くの場面での活用が予想されます。

6.まとめ

本記事では自治体DXの現状や課題の解決策、導入事例について解説しました。社会全体としてDXを推進している中、自治体での推進も例外ではありません。本記事で紹介した導入事例を参考に、各自治体に合ったDXの構築を進めていきましょう。