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銀行・金融業界におけるAI活用事例|生成AI・業務効率化・導入メリットを解説
#金融 AI #金融 DX
銀行・金融業界では、融資審査の高度化、不正検知の精度向上、顧客対応の自動化、そして膨大な紙書類を扱うバックオフィスの効率化など、あらゆる領域でAI活用が急速に広がっています。人手不足や店舗統廃合の加速といった構造課題が強まる中、AIは業務の質と生産性を同時に高めるための現実的な手段として位置付けられつつあります。
本記事では、金融業界におけるAIの活用状況や導入メリット、留意すべきリスク、具体的な活用事例を整理し、AI活用を進めるための視点を解説します。
目次
1.銀行・金融業界におけるAIの活用状況
銀行をはじめとする金融業界では、業務効率化とサービス高度化の両立を目的に、AI活用が急速に進んでいます。特に近年は、実証実験の段階を超えて、実業務への本格導入が広がっており、活用領域も多様化しています。現在、AIは主に以下の領域で効果を発揮しています。
・融資審査
・顧客対応
・ドキュメント処理(帳票処理)
・相続手続きの効率化
1-1.融資審査
法人向け融資では、損益計算書や貸借対照表といった決算書類に加え、事業計画書、資金繰り表など多くの資料をもとに審査が行われます。従来は担当者がこれらの情報を個別に確認し、経験や知見をもとに判断していましたが、近年ではAIを活用した与信判断の高度化が進んでいます。
AIは、過去の取引履歴や入出金データ、財務情報などの大量データを高速かつ網羅的に分析できるため、審査プロセスにおける情報整理やスコアリングを支援します。最終的な判断は人が担うケースが一般的ですが、AIがスコアリングやリスク分析を行うことで、融資条件の提示や審査結果の通知をより迅速に行えるようになっています。オンライン申込が増える中、スピードと公平性を両立する手段としてAI活用は重要性を増しています。
1-2.顧客対応
顧客対応の分野では、AIチャットボットや音声認識技術の導入が進んでいます。残高照会や各種手続き方法の案内、よくある質問への回答といった定型的な問い合わせをAIが担うことで、営業時間外や休業日でも24時間対応が可能になります。
これにより、オペレーターの業務負担が軽減されるだけでなく、顧客は待ち時間なく必要な情報を得られるようになります。近年は、問い合わせ履歴をもとに回答精度を継続的に改善する仕組みも整備されており、顧客満足度の向上と対応品質の安定化を同時に実現する手段として、多くの銀行が導入を進めています。
1-3.ドキュメント処理
銀行のバックオフィスでは、口座開設申込書や住所変更届、各種申請書類など、今もなお紙中心の帳票が大量に扱われています。これまで、これらの情報は担当者が目視で確認し、手入力でシステムに登録していました。
現在は、AI-OCR(AIによる文字認識)を活用することで、手書き文字や印字文字を高精度で読み取り、データ入力を自動化する取り組みが広がっています。RPAと組み合わせることで、入力からチェック、登録までの一連の流れを自動化する取り組みが進んでいます。特に処理件数の多い銀行では、早期に導入が検討されやすい領域とされています。
1-4.相続手続きの効率化
金融業界では、預金の相続手続きにAIを活用する動きも進んでいます。相続手続きでは、戸籍謄本や除籍謄本など多くの書類を確認し、家族関係を正確に把握する必要があり、担当者に高い専門性と作業時間が求められます。
AIを活用することで、これらの書類をデジタル化し、文字情報を読み取った上で、家族関係図の作成を支援することが可能になります。さらに、書類審査の一部をイメージデータ解析やプログラムチェックで補助することで、確認作業の負荷を大幅に軽減できます。熟練担当者に依存しがちだった業務を標準化しやすくなる点も、大きなメリットといえます。

2.銀行でAI活用が進んでいる理由
銀行でAI活用が急速に進んでいる背景には、業界を取り巻く環境の大きな変化があります。FinTech企業の台頭による競争激化、慢性的な人手不足とコスト構造の課題、そして顧客ニーズの高度化・多様化が同時に進行しており、従来の人手中心の業務運営では対応が難しくなっています。こうした課題を解決し、業務の質と生産性を両立する手段として、AIは不可欠な存在となりつつあります。
2-1.FinTech企業の台頭と競争激化
近年、FinTech企業の成長により、金融サービスを取り巻く競争環境は大きく変化しました。FinTech企業は、デジタル技術を前提としたシンプルなシステムとスピーディーな意思決定を強みに、低コストかつ利便性の高いサービスを次々に提供しています。スマートフォン完結型の融資や投資、送金サービスなどはその代表例です。
一方、従来の銀行は勘定系システムをはじめとする複雑なIT基盤を抱えており、新しい施策を迅速に打ち出しにくいという構造的な制約があります。また、店舗運営や人員配置にかかるコストも重く、競争力を維持することが難しくなっています。こうした状況下で、多くの銀行ではAIを活用して業務を効率化し、サービスの高度化やスピード向上を図る動きが加速しています。
2-2.コスト削減と人手不足への対応
銀行は本店に加え、多数の支店や事務拠点を運営しており、賃料や人件費などの固定費が大きな負担となっています。特に、少子高齢化の進展により人手不足が深刻化する中、経験やノウハウを持つ職員の退職や高齢化が進み、業務の継続性にも課題が生じています。
AIを導入することで、こうした課題への対応を進める動きがあります。顧客対応の一部をAIチャットボットに任せる、書類処理をAI-OCRで自動化するといった取り組みにより、人的コストを抑えながら業務量を処理できる体制を構築できます。また、ベテラン職員の業務判断や対応ノウハウをAIに取り込み、業務を標準化することで、属人化の解消やスムーズな世代交代にもつながります。AIは、コスト削減と人材課題の双方を支える手段として注目されています。
2-3.顧客ニーズに応える提案力の強化
顧客の金融ニーズは、ライフステージや価値観の変化により多様化・高度化しています。投資におけるリスク許容度や運用スタイル、将来設計は一人ひとり異なり、画一的な商品提案では満足を得にくくなっています。特に窓口やオンラインでの資産運用提案では、「顧客の意向に沿っているか」がこれまで以上に重視されています。
AIは、過去の取引履歴や行動データ、顧客属性などをもとに、個々の顧客に適した提案内容やタイミングを分析できます。これにより、担当者の経験や勘に頼らない、データに基づいた提案が可能になります。顧客満足度の向上だけでなく、不適切な提案の防止や説明責任の強化にもつながることが期待されています。
3.銀行がAIを導入するメリット
銀行がAIを導入することで得られるメリットは、単なる省力化にとどまりません。業務効率の向上、リスク管理の高度化、判断精度の改善など、銀行業務の質そのものを高める効果が期待されています。ここでは、銀行におけるAI導入の代表的な3つのメリットを紹介します。
3-1.自動化による業務効率化の実現
AIの導入により、これまで人手で行っていた問い合わせ対応や書類処理といった定型業務を自動化しやすくなります。代表例が、AIチャットボットによる問い合わせ対応や、音声認識技術を活用したコールセンター業務の支援です。定型的な問い合わせや通話内容の記録・要約をAIが担うことで、職員はより判断や調整を要する業務に集中できるようになります。
また、実店舗や事務センターにおいても、AI‑OCRやRPAを組み合わせた書類処理の自動化が進んでいます。これにより、作業時間の短縮や入力ミスの削減が実現されており、業務のスピードと品質を同時に向上させる効果が出ています。今後は「人でなければできない業務」と「AIに任せられる業務」を切り分けることで、生産性の高い業務体制への転換がさらに進むと考えられます。
3-2.サイバーセキュリティの強化
膨大な個人情報や取引データを扱う銀行にとって、サイバーセキュリティは信用に直結する重要なテーマです。しかし、サイバー攻撃の手口は年々巧妙化・高度化しており、人の目やルールベースの監視だけでは対応が難しくなっています。
AIを活用することで、通信ログやアクセス履歴、取引データを常時モニタリングし、通常とは異なる挙動を迅速に検知することが可能になります。不正アクセスや不審な操作を早期に発見できるため、被害の拡大を防ぐ効果が期待されます。また、AIは学習を重ねることで検知精度が向上するという特性を持つため、新たな攻撃パターンにも柔軟に対応できます。人の判断に依存していた不正監視をAIが補完することで、ヒューマンエラーの低減にもつながります。
3-3.信用評価の補助や精度の向上
銀行業務の中でも特に重要なのが、信用評価を伴う業務です。融資をはじめ、事業承継やM&Aに関する支援、資産運用のアドバイスなど、多くの業務で「正確な判断」が求められます。
従来の融資審査では、決算書類や事業計画書の確認に多くの時間を要し、担当者の経験差が判断に影響するケースもありました。AIを導入することで、過去の取引データや財務情報をもとにリスクを定量的に分析し、判断材料を迅速に整理できます。これにより、審査のスピードアップだけでなく、判断のばらつきを抑えた安定した審査運用が可能になります。最終判断を人が行う前提を維持しつつ、AIが判断補助を担う形が主流となっています。

4.AI導入に伴うリスクと対策
AIの導入は銀行に多くのメリットをもたらしますが、一方で注意すべきリスクも存在します。特に金融機関では、説明責任や公平性、情報セキュリティといった観点が重視されるため、リスクを理解したうえで適切な対策を講じることが不可欠です。
4-1.判断のブラックボックス化
AIは高度な分析を行える一方で、判断に至ったプロセスが分かりにくい「ブラックボックス化」が課題となる場合があります。融資判断や不正検知において根拠を説明できない状態では、顧客や監督当局に対する説明責任を果たせません。
そのため、判断理由を可視化できる仕組み(XAI:説明可能なAI)を採用し、人が判断内容を検証できる体制を整えることが重要です。AIはあくまで補助的な役割と位置づけ、人が最終確認を行う運用が求められます。
4-2.倫理的な問題
AIは、学習データの内容によっては偏った判断を下す可能性があります。例えば、過去のデータに偏りがある場合、特定の属性の顧客を不利に扱うといった問題が生じる恐れがあります。
このようなリスクを避けるためには、学習データの妥当性を確認し、定期的に判断結果の検証を行うことが重要です。人によるチェックやガイドラインを設けることで、公平性を確保する取り組みが必要になります。
4-3.セキュリティリスク
AIシステム自体がサイバー攻撃の対象になる可能性もあります。システムの脆弱性を突かれた場合、顧客情報の漏洩や不正操作につながる恐れがあります。
対策としては、アクセス権限の厳格な管理やログ監視、定期的なセキュリティチェックを行い、AIを含むシステム全体を金融機関のセキュリティ基準に沿って運用することが欠かせません。
4-4.データ品質に起因するリスク
AIの判断精度は、学習に使われるデータの品質に大きく左右されます。誤ったデータや不完全なデータが含まれていると、誤判断を招く可能性があります。
このため、データの整備や定期的な見直し、誤りの検知・修正の仕組みを整えることが重要です。AI導入と並行して、データ管理体制を強化することが、安定した運用につながります。
5.銀行・金融業界のAI活用事例
銀行・金融業界では、AIの活用が実証実験の段階を超え、実業務に深く組み込まれるフェーズへと進んでいます。ここでは、国内銀行で実際に導入が進んでいる代表的なAI活用事例を紹介します。
5-1.生成AIを基盤とした全社的な業務変革
生成AIを単なるツールではなく全社的な業務基盤として位置づける動きが加速しています。
ある銀行では、独自の対話型AIを構築し、全職員が文章要約や翻訳、コード生成などの基本機能を日常的に活用できる環境を整えました。特に、社内規程やマニュアルを横断的に検索する検索拡張生成の仕組みを高度化させることで、組織内の膨大な知見を即座に引き出せるナレッジインフラへと進化させています。
また別の銀行では、AI基盤を業務改革に活用しています。各部門から収集した具体的なニーズに基づき、専門性の高い業務へスピーディーに適用しています。生成AIの活用を前提として、従来の業務フローをゼロベースで見直すことで、全行規模での抜本的なDXを推進しています。
5-2.社内照会対応を支えるAIヘルプデスクの導入
ある銀行では、チャットツール上で稼働するAIヘルプデスクを導入し、行内の問い合わせ対応を大幅に効率化しています。新しいシステムの操作方法や制度変更に伴う複雑な社内照会を、AIが一次対応することで、職員の業務負担を軽減しています。
チャット上で過去の回答履歴をナレッジとして蓄積・再利用できる仕組みを整えたことで、回答品質の安定化を実現しました。属人化しやすい専門的な照会業務を標準化し、営業店が迅速に顧客対応へ専念できる環境を構築しています。
5-3.AI‑OCRと生成AIを統合した事務基盤の実装
銀行実務のデジタル化において、依然として残る「紙書類」の処理は極めて大きな課題です。現在、AI-OCRと生成AIを組み合わせることで、こうしたアナログな事務手続きを抜本的に刷新する動きが広がっています。
プリマジェストの事務集中基盤ソリューションでは、営業店で受け付けた申込書や融資書類をスキャン・撮影してデータ化し、内容の自動チェックからシステム連携までを一気通貫で処理します。最大の特徴は、生成AIが書類の文脈を理解することで、従来は困難だった複雑な帳票の仕分けや審査の補助までが可能になった点です。これにより、本部の事務工数削減と顧客への回答スピード向上を同時に実現。リアルとデジタルが混在する銀行実務において、現場の業務をデジタルへ橋渡しする強力な手段となっています。
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5-4.融資業務における生成AI活用
金融業界において、専門的な知識を要する融資業務は、生成AI活用の核となる領域です。単なる事務効率化に留まらず、判断業務の高度化にまで活用が広がっています。
ある銀行グループでは、融資稟議の作成支援を起点として生成AIを導入し、段階的に活用の幅を広げていく取り組みを進めています。初期段階では既存事務の効率化によって知見を蓄積し、次いでその実績を顧客提案や高度なリスク分析といった判断業務へと展開。AIを分析の補助に組み込むことで、組織全体の意思決定の質を平準化し、中長期的な競争力の向上につなげています。
実務現場での融資業務の効率化を実現している銀行の事例もあります。生成AIを活用した専用アプリの導入により、従来手作業で行っていたデータ抽出や文章構成を自動化し、標準的な案件の作成時間を大幅に短縮しました。高度な事務作業をAIで標準化することで、単なる工数削減だけでなく、行員が顧客との対話やコンサルティングに専念できる環境を整えています。
5-5.営業支援AIのプラットフォーム展開
金融機関のデータをAIで分析し、営業活動を高度化するプラットフォームの提供が広がっています。
ある金融グループでは、顧客ニーズをスコア化して成約率を予測する業務支援ツールを開発しました。この仕組みは、提案準備の負担を軽減し、担当者がより質の高い顧客対応に専念できる環境を整えています。特徴的なのは、自社での活用実績をパッケージ化し、他の金融機関へも広く外販している点です。
自社の知見を外販するプラットフォーム展開は、新たな収益モデルとしても注目されています。導入機関の拡大を通じて、業界全体の営業スタイルをデータドリブンなものへと進化させ、金融DXを底上げする取り組みとなっています。
5-6.不正取引・サイバー領域におけるAI監視の高度化
銀行業界では、巧妙化する不正送金やマネー・ローンダリングを防ぐため、AIによる取引モニタリングの高度化が急務となっています。膨大な取引データからAIが「普段と異なる動き」をリアルタイムで検知する仕組みにより、人手では困難だった不正の兆候把握と、監視業務の大幅な負荷軽減が図られています。
また、サイバー攻撃への対策においても、ログ分析や脅威検知にAIが活用されており、生成AIの導入に際しては厳格なガバナンス体制の構築も並行して進められています。利便性の追求だけでなく、金融機関の根幹である「安全・安心」を担保する領域においても、AIは不可欠な防波堤としての役割を担っています。
6.銀行業界に広がるAI活用の実践と次の一歩
本記事では、銀行・金融業界におけるAI活用の取り組みを、社内業務、事務処理、顧客対応などの実例を通じて紹介してきました。各事例からは、生成AIやAI‑OCRを業務に組み込み、効率化や属人性の低減、対応品質の安定化を進めている様子が見て取れます。
多くの金融機関に共通しているのは、AIを部分的に導入するのではなく、既存業務に自然に組み込みながら段階的に活用範囲を広げている点です。社内照会、文書作成、融資・事務業務など、現場に直結する領域から実装が進んでいます。
今後は、AIを前提とした業務設計や事務基盤の整備が、持続的な業務運営やサービス高度化の土台となっていくでしょう。銀行業務におけるAI活用をご検討の際は、プリマジェストへお気軽にご相談ください。
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